緑肥の種類と土壌改良への活用方法
2026年2月6日

緑肥による土壌改良の効果と実践方法を詳しく解説します。イネ科・マメ科の緑肥の種類と特性、選び方、すき込みのタイミング、リビングマルチ栽培などの先進技術まで、研究データに基づいた土づくりの情報を提供します。
緑肥の種類と土壌改良への活用方法
緑肥は、持続可能な農業と家庭菜園において重要な役割を果たす「生きた肥料」です。化学肥料に頼らずに土壌の肥沃度を高め、環境にやさしい栽培方法として注目を集めています。本記事では、緑肥の種類と特徴、そして効果的な土壌改良への活用方法について詳しく解説します。
緑肥とは何か:基礎知識と重要性
緑肥とは、植物そのものを肥料として土壌に還元する方法です。特定の作物を栽培し、成長した植物体を刈り取って土壌に混ぜ込むことで、土壌に有機物と栄養分を供給します。土づくり・堆肥・肥料の基礎知識の一環として、緑肥は古くから活用されてきた伝統的な技術です。
緑肥の最大の特徴は、土壌改良と養分供給の両方を同時に実現できる点にあります。研究によると、緑肥の導入により土壌有機物が34.82%増加し、全窒素が32.23%向上することが明らかになっています。さらに、リン酸が34.34%、カリウムが17.43%増加する一方で、土壌の塩分含有量が47.75%減少するという優れた効果も報告されています(MDPI研究)。
緑肥は化学肥料の使用量を削減しながら、土壌の健全性を高めることができるため、環境保全型農業の実現に不可欠な技術となっています。家庭菜園でも気軽に取り入れることができ、長期的な土壌管理の観点からも非常に有効です。
イネ科緑肥の種類と特性
イネ科の緑肥は、土壌の物理性改善に優れた効果を発揮します。根が深く張り、土壌を耕す効果があるほか、豊富な有機物を供給して微生物の活動を活性化します。

夏まき用イネ科緑肥
ソルガム(ソルゴー)は、最も人気の高いイネ科緑肥の一つです。草丈が2~3メートルにもなる大型の作物で、短期間で大量のバイオマスを生産できます。深く張る根により、固い土壌を物理的に改善し、排水性を向上させます。また、養分過多な圃場の養分吸収にも適しています(カクイチ情報)。
スーダングラスは、乾燥に強く、暑さにも耐性があるため、夏季の栽培に適しています。生育が早く、刈り取り後の再生力も高いため、複数回の刈り取りが可能です。
トウモロコシ(デントコーン)は、バイオマス量が多く、土壌の深層部まで根を張るため、深耕効果が期待できます。
冬まき用イネ科緑肥
エンバク(オーツ麦)は、寒さに強く、秋から春にかけて栽培できます。土壌の団粒構造を促進し、保水性と排水性のバランスを改善します。季節の園芸カレンダーに合わせて計画的に栽培することで、効果を最大化できます。
ライムギは、非常に耐寒性が高く、冬季でも成長を続けます。雑草抑制効果も高く、次作の栽培準備に適しています。
イタリアンライグラスは、成長が早く、早春の緑肥として優れています。柔らかい植物体は分解が早いという利点があります。
マメ科緑肥の種類と窒素固定能力
マメ科緑肥の最大の特徴は、根粒菌との共生により大気中の窒素を固定する能力です。この窒素固定により、土壌に窒素肥料を供給することなく、次作に必要な窒素を提供できます。

夏まき用マメ科緑肥
クロタラリア(タヌキマメ)は、線虫抑制効果が高く、連作障害の軽減に効果的です。窒素固定量も多く、土づくりに最適な緑肥です。病害虫対策の一環としても活用できます。
セスバニア(田菁)は、湿地でも栽培可能で、水田の緑肥として利用されます。バイオマス量が多く、短期間で大量の有機物を供給します。
エビスグサ(ハブ茶)は、薬用植物としても知られ、土壌改良効果と実用性を兼ね備えています。
冬まき用マメ科緑肥
ヘアリーベッチは、冬季の緑肥として最も人気があり、窒素固定量が非常に多い作物です。マット状に地面を覆うため、雑草抑制効果も高く、春先の土壌保護にも貢献します。
レンゲ(ゲンゲ)は、日本の水田で伝統的に使用されてきた緑肥で、景観美も楽しめます。窒素固定量は1ヘクタールあたり150~200kg程度と報告されています。
クリムソンクローバーは、赤い美しい花を咲かせる観賞価値も高い緑肥です。土壌の団粒構造を形成し、物理性を改善します。
緑肥による土壌改良の効果とメカニズム
緑肥の土壌改良効果は、物理的・化学的・生物的な多面的なメカニズムによって実現されます。
物理的改良効果
イネ科緑肥の深い根系は、固い土壌を物理的に破砕し、透水性と通気性を改善します。緑肥の植物体をすき込むことで、土壌中に隙間が形成され、団粒構造が発達します。この団粒構造により、水はけと水持ちのバランスが最適化されます(minorasu解説)。
化学的改良効果
マメ科緑肥は根粒菌により窒素を固定し、土壌に団粒構造を形成します。イネ科緑肥も、炭素含有量が高い有機物を供給し、土壌の保肥力を向上させます。緑肥の分解過程で、窒素、リン酸、カリウムなどの養分が徐々に放出され、次作の栄養源となります。
生物的改良効果
緑肥は土壌微生物の活動を活性化します。有機物の分解過程で、多様な微生物群が増殖し、土壌の生物多様性が向上します。これにより、土壌の病害抑制効果や養分循環が促進されます。長期的な緑肥栽培により、土壌メソファウナ(中型土壌動物)の豊富さ、多様性が有意に増加することが研究で確認されています(ScienceDirect研究)。
緑肥の選び方:目的別の使い分けガイド
効果的な緑肥活用には、目的に応じた適切な種類の選択が重要です。

土壌の物理性改善を優先する場合
硬い土壌や排水不良の圃場では、イネ科のソルガム、エンバク、デントコーンが適しています。これらは深根性で、土壌を物理的に改良する効果が高いです。
窒素供給を優先する場合
窒素が不足している土壌や、窒素を多く必要とする作物の前作には、マメ科のクロタラリア、ヘアリーベッチ、クローバー類を選びます。窒素固定により、化学肥料の削減が可能になります。
病害虫対策を目的とする場合
線虫被害が懸念される圃場では、クロタラリアやマリーゴールドが有効です。これらは特定の線虫に対する抑制効果を持ちます(AGRI PICK情報)。
雑草抑制を目的とする場合
ヘアリーベッチ、ライムギ、エンバクなど、地表を密に覆う緑肥が雑草抑制に効果的です。マット状に成長することで、光を遮断し、雑草の発芽と成長を抑えます。
次作との相性を考慮する
緑肥の選択では、次に栽培する作物との相性も重要です。同じ科の植物を続けて栽培すると、病害虫のリスクが高まるため、異なる科の緑肥を選ぶようにします。例えば、家庭菜園でナス科野菜を栽培する予定なら、イネ科やマメ科の緑肥を選択します。
緑肥の栽培とすき込みのタイミング
緑肥の効果を最大化するには、適切な栽培期間とすき込みのタイミングが重要です。

播種時期の選定
緑肥の播種時期は、気候と次作の栽培スケジュールによって決定します。季節の園芸カレンダーを参考に、最適な時期を選びます。
夏まき緑肥(4月~8月播種):ソルガム、クロタラリア、セスバニア
冬まき緑肥(9月~11月播種):ヘアリーベッチ、レンゲ、エンバク
すき込みの最適タイミング
緑肥のすき込みは、開花期前後が理想的です。イネ科は穂が出始める頃、マメ科は花が咲き始める頃が目安となります。この時期は、植物体が柔らかく分解しやすい一方で、十分なバイオマスが確保できています。
すき込みが遅れると、茎葉が硬くなり、C/N比(炭素・窒素比)が高くなります。C/N比が高すぎると、緑肥の分解に土壌の窒素が消費され、一時的な窒素飢餓状態が発生する可能性があるため注意が必要です(農林水産省マニュアル)。
腐熟期間の確保
緑肥をすき込んだ後は、約2~3週間の腐熟期間を設けます。この期間中に、土壌微生物が緑肥を分解し、養分を植物が利用可能な形態に変換します。腐熟期間が不十分な状態で次作を播種すると、発芽障害や初期生育不良が発生する可能性があります。
リビングマルチ栽培による先進的活用法
リビングマルチ栽培は、主作物と緑肥を同時に栽培する先進的な技術です。作業の省力化と環境対策の効果が得られることから、注目を集めています。
リビングマルチのメリット
主作物の畝間や通路に緑肥を栽培することで、以下の効果が得られます:
- 雑草抑制:緑肥が地表を覆い、雑草の発生を抑制
- 土壌浸食防止:常に地表が植物で覆われることで、風雨による土壌流出を防止
- 水分保持:地表面からの水分蒸発を抑え、土壌水分を安定化
- 温度調整:夏季の地温上昇を抑制
- 益虫の生息地:天敵昆虫の生息地を提供し、生物的防除を促進
リビングマルチの実践方法
主作物と緑肥の競合を避けるため、適切な距離を保つことが重要です。背の高い緑肥が主作物の日照を遮らないよう、定期的な刈り込み管理を行います。刈り取った緑肥は、マルチとして地表に敷くことで、さらなる効果が得られます(JAあつぎ営農通信)。
緑肥活用の注意点とトラブル対策
緑肥を効果的に活用するためには、いくつかの注意点があります。
C/N比の管理
イネ科緑肥は炭素含有量が高く、C/N比が高い傾向にあります。高C/N比の緑肥を大量にすき込むと、土壌微生物が分解に窒素を消費し、一時的に次作の窒素不足を引き起こす可能性があります。対策として、マメ科とイネ科の混播や、すき込み後の十分な腐熟期間の確保が有効です。
病害虫の持ち越しリスク
緑肥と次作が同じ科の場合、病害虫が持ち越されるリスクがあります。アブラナ科野菜の前にアブラナ科緑肥を使用しないなど、科の異なる緑肥を選択します。病害虫対策の基本として、輪作・混作の考え方を適用します。
水分管理
緑肥の栽培中は、適切な水分管理が必要です。特に播種直後は、発芽に十分な水分を確保します。水やり・灌漑システムの知識を活用し、効率的な水管理を実践します。
種子の自生化
一部の緑肥は、種子が圃場に残存し、次作の雑草化することがあります。開花前にすき込むか、種子が成熟する前に刈り取ることで防止できます。
緑肥導入による経済効果と環境効果
緑肥の導入は、経済的にも環境的にも多くのメリットをもたらします。
経済効果
緑肥導入により収穫量が増加し、利益が17~33%向上した事例が報告されています。化学肥料の使用量削減により、肥料コストが低減されます。また、長期的な土壌改良により、持続的な生産性向上が実現します。
| 項目 | 緑肥導入前 | 緑肥導入後 | 改善率 |
|---|---|---|---|
| 土壌有機物含有量 | 基準値 | +34.82% | 34.82% |
| 全窒素含有量 | 基準値 | +32.23% | 32.23% |
| 可給態リン | 基準値 | +34.34% | 34.34% |
| 可給態カリウム | 基準値 | +17.43% | 17.43% |
| 土壌塩分 | 基準値 | -47.75% | 47.75%減少 |
| 利益増加 | 基準値 | +17~33% | 17~33% |
環境効果
緑肥は、化学肥料の使用削減により、環境負荷を低減します。窒素肥料の製造には多大なエネルギーが必要ですが、マメ科緑肥の窒素固定により、この環境負荷を軽減できます。また、土壌浸食の防止により、水質保全にも貢献します。
ガーデニング入門として緑肥を取り入れることで、環境に配慮した持続可能な園芸活動を実践できます。
緑肥と堆肥の組み合わせによる相乗効果
緑肥と堆肥を組み合わせることで、より高い土壌改良効果が得られます。
組み合わせのメリット
堆肥は即効性のある有機物を供給し、緑肥は持続的な有機物供給源となります。堆肥の微生物が緑肥の分解を促進し、相乗効果を発揮します。
実践的な活用方法
秋に緑肥をすき込み、その上に堆肥を施用することで、冬季の土壌微生物活動を維持できます。春の作付け前には、十分に腐熟した肥沃な土壌が準備されます。
複数の有機質資材と化学肥料の組み合わせにより、稲の収穫量が増加し、土壌品質が向上することで、経済的効果が最大化されることが研究で示されています。
まとめ:持続可能な土づくりのために
緑肥は、環境に優しく、経済的にも合理的な土壌改良の手法です。イネ科とマメ科の特性を理解し、目的に応じて適切な種類を選択することで、効果的な土づくりが実現できます。
研究データが示すように、緑肥の導入により土壌有機物、窒素、リン酸、カリウムが大幅に増加し、土壌の物理性、化学性、生物性が総合的に改善されます。また、リビングマルチ栽培などの先進的な活用法により、作業の省力化と環境保全を両立できます。
土づくり・堆肥・肥料の基礎知識を深め、緑肥を効果的に活用することで、持続可能な農業と園芸を実現しましょう。化学肥料に頼らない健全な土壌づくりは、未来の豊かな食と環境を守る第一歩となります。





