和風庭園の照明演出と夜の庭の楽しみ方
2026年2月6日

和風庭園は昼間の美しさだけでなく、夜の照明演出によって全く異なる表情を見せます。適切なライティングを施すことで、日中とは一味違う幻想的な空間を作り出すことができます。本記事では、和風庭園における照明の基本から実践的なテクニック、さらには夜の庭を安全かつ美しく楽しむための方法まで、総合的に解説していきます。
和風庭園の照明演出と夜の庭の楽しみ方
和風庭園は昼間の美しさだけでなく、夜の照明演出によって全く異なる表情を見せます。適切なライティングを施すことで、日中とは一味違う幻想的な空間を作り出すことができます。本記事では、和風庭園における照明の基本から実践的なテクニック、さらには夜の庭を安全かつ美しく楽しむための方法まで、総合的に解説していきます。
和風庭園の夜間照明の基本原則
和風庭園のライトアップで最も重要なのは、「光源を見せない」という原則です。日本の伝統的な庭園では、石灯籠や月明かりのみで照明していた歴史があり、現代の照明でもこの控えめな美学を継承することが求められます。
間接光で周囲をやさしく照らし、眩しさを感じる光源は見えないようにすることが基本です。照明の色は、やわらかく発光する乳白色や電球色がおすすめで、白色LEDの冷たい光は避けるべきでしょう。光の強さについても、明るすぎると庭園の持つ静謐な雰囲気が損なわれてしまうため、適度な明るさに抑えることが大切です。
また、日本庭園の基本的な設計思想を理解した上で照明計画を立てることで、より調和のとれた空間を作ることができます。庭園の持つ「見立て」や「借景」といった要素を照明で引き立てることで、夜ならではの新たな発見を生み出せます。
樹木と植栽のライトアップ技法
樹木を美しく照らすためには、樹木の「高さ」と光の「明るさ」、樹冠の「広がり」と光の「配光角」、葉の「色味」と光の「色温度」の3つの要素を考慮する必要があります。

住宅の和風庭園の場合、適切な明るさは約70lxが最適とされています。これより暗いと樹木の先端まで光が届かず物足りない演出になり、逆に明るすぎるとグレア(眩しさ)が発生して近所に迷惑をかける可能性があります。
色温度の選択も重要です。黄緑や緑系の葉には電球色を合わせ、深い緑やシルバーがかった色にはより白色に近い光を合わせるのがおすすめです。松や紅葉など、和の空間でよく使われる樹木は色鮮やかなものが多いため、それぞれの特性に合わせた照明を選ぶことで、より美しい演出が可能になります。
シャドーライティングという技法も効果的です。竹や楓の下に低めのアップライトを配置することで、壁面に美しい影を映し出すことができます。この影は墨絵のような趣があり、和の雰囲気を一層引き立てます。
| 樹木の種類 | 推奨色温度 | 照射角度 | 効果的な演出 |
|---|---|---|---|
| 松 | 2700K-3000K(電球色) | 30-45度 | 枝ぶりの陰影強調 |
| 紅葉 | 2700K-3500K(暖色系) | 45-60度 | 葉の色彩を鮮やかに |
| 竹 | 3000K-4000K(中間色) | 15-30度 | シャドーライティング |
| 苔庭 | 3500K-4500K(やや白色) | 広角60度以上 | 全体をやさしく照らす |
水景のライトアップとミラー効果
池や流れのある庭では、水面を活かした「ミラーライティング」という技法が効果的です。水面近くの植栽や樹木をライトアップすることで、その景色が水面に映り込み、夜ならではの幻想的な景観を作り出すことができます。

水景の照明では、光を水面に直接当てるのではなく、周囲の景観要素を照らしてその反射を楽しむのがポイントです。池の周囲に配置された石灯籠や樹木を適切に照らすことで、水面が自然な鏡となり、実際の景色と反射した景色が一体となった美しい空間が生まれます。
また、小さなつくばいや水鉢などの水景要素にも、控えめな照明を当てることで、水の動きや音を視覚的に強調できます。流れる水に光が反射してきらめく様子は、静かな夜の庭に動きと生命感をもたらします。
水景のライトアップで注意すべきは、光の角度です。真上や真横からの照明は避け、斜め下やや後方から照らすことで、月明かりのような自然な光を演出できます。人工的な印象を与えないよう、光源の位置と角度には特に配慮が必要です。
照明器具の種類と選び方
和風庭園で使用する照明器具には、いくつかの種類があります。電源方式による分類では、「100Vタイプ」「12Vタイプ」「ソーラータイプ」の3種類が主流です。

近年、外構照明では12V低電圧照明が主流となっています。低電圧であれば感電の心配がなく、小さなお子様やペットがいる家庭でも安全に使用できます。また、配線工事も比較的簡単で、後からの増設や位置変更も容易です。
デザイン面では、石灯籠型、行燈型、埋め込み型など、様々なスタイルの照明器具があります。和風庭園の雰囲気に合わせて、昼間見ても違和感のないデザインを選ぶことが重要です。最近では、昼間は景観に溶け込み、夜だけ機能する埋め込み型のライトも人気です。
光の調整機能も重要な選択基準です。調光機能や照射角度の調整機能があれば、季節や時間帯、用途に応じて最適な照明環境を作り出せます。特に照射角度を調整できるライトは、近隣への光害対策としても有効です。
| 照明タイプ | メリット | デメリット | 適した用途 |
|---|---|---|---|
| 100V | 明るさ安定、長時間使用可 | 電気工事必要、安全性に注意 | メイン照明、樹木ライト |
| 12V | 安全性高い、DIY可能 | トランス必要、配線距離制限 | 小道、植栽周辺 |
| ソーラー | 配線不要、省エネ | 天候に左右、明るさ弱い | 補助照明、アクセント |
| LED | 省エネ、長寿命、発熱少 | 初期コスト高め | 全般的に推奨 |
アプローチと小道の照明計画
和風庭園のアプローチや飛び石の小道には、安全性と美観を両立させた照明計画が必要です。足元の明るさを確保しつつ、過度に明るくならないよう配慮することが大切です。
アプローチの照明では、緩やかに陰影をつけ、一定のリズムでライトアップすることがポイントです。すべてを均一に照らすのではなく、光と影のコントラストを作ることで、奥行き感と趣のある空間が生まれます。
飛び石や敷石の配置に合わせて、低い位置に光を置くと落ち着いた印象になります。行燈のような和風な見た目のライトを選ぶことで、より空間を和に演出できます。また、突き当たりの壁面や玄関部分が暗くならないよう意識し、アプローチは壁面より明るさを抑えたやわらかい光で足元の明るさを確保しましょう。
埋め込み型のフットライトを使用する場合は、グレア(眩しさ)が出ないよう、光源が直接目に入らない角度に設置することが重要です。歩く人の目線より低い位置から、地面や石を照らすように配置するのが理想的です。
石灯籠と伝統的な照明要素の活用
和風庭園の代表的な照明要素といえば石灯籠です。伝統的には蝋燭や油を燃やして使用されていましたが、現代では内部にLED照明を仕込むことで、安全かつ手軽に伝統的な雰囲気を楽しめます。
石灯籠には雪見灯籠、春日灯籠、織部灯籠など、様々な形式があり、それぞれ庭園における役割や配置場所が異なります。雪見灯籠は池の畔に、春日灯籠は小道沿いに配置するのが一般的です。これらの灯籠に適切な照明を施すことで、歴史的な庭園の雰囲気を現代に蘇らせることができます。
竹垣や塀に設置する壁掛け型の照明も、和風庭園の演出に効果的です。下向きに光を放つブラケットライトを使用することで、壁面や地面をやさしく照らし、立体的な陰影を作り出せます。
また、つくばいや手水鉢などの水景要素の近くに石灯籠を配置し、水面に映る灯りを楽しむのも、伝統的な和の楽しみ方です。揺らめく水面に映る柔らかな光は、静謐な夜の庭に動きと詩情をもたらします。
近隣への配慮と光害対策
庭園の照明を楽しむ上で忘れてはならないのが、近隣への配慮です。ライトの光が道路に漏れて眩しい、または隣の家の方向を向いていると、近所から苦情が来る可能性があります。
照射角度を調整できるライトを選び、必要な部分だけを照らす工夫が求められます。特に上方向への光漏れは、近隣の窓や寝室を照らしてしまう可能性があるため、光が上向きにならないよう注意が必要です。
また、屋外照明が植物の生育に悪影響を与える「光害」も問題視されています。植物は光周期(日長)によって開花や休眠を制御しているため、夜間も強い光を当て続けると、本来の生育サイクルが乱れる可能性があります。特に果樹や季節の花を育てている場合は、照明の影響に注意が必要です。
タイマー機能や人感センサーを活用することで、必要な時だけ照明を点灯させる方法も有効です。就寝時間には自動的に消灯するよう設定することで、近隣への配慮と省エネを同時に実現できます。
季節ごとの照明演出の変化
和風庭園の魅力は、四季折々の変化にあります。照明演出も季節に合わせて変化させることで、より豊かな庭の楽しみ方ができます。

春は桜や梅などの花木のライトアップが効果的です。淡い花びらに柔らかな光を当てることで、夜桜の幻想的な美しさを楽しめます。初夏には新緑のもみじや竹の青々とした葉を照らし、爽やかな夜の庭を演出します。
夏は涼しさを感じさせる演出がポイントです。水景のライトアップを強調し、水の音と光の反射で涼感を演出します。青白い光や月明かりを思わせる照明を使うことで、視覚的な涼しさを生み出せます。
秋は紅葉のライトアップが主役です。赤や黄色に色づいた葉は、適切な色温度の光を当てることで、その色彩がより鮮やかに浮かび上がります。落ち葉を照らすことで、地面にも美しい色彩の絨毯が広がります。
冬は雪見の演出や、常緑樹の深い緑を引き立てる照明が効果的です。雪が積もった庭に柔らかな光を当てることで、静謐で幻想的な冬の夜を楽しめます。季節ごとの庭の手入れに合わせて照明計画も見直すことで、一年を通じて変化に富んだ夜の庭を楽しめるでしょう。
夜の庭を楽しむライフスタイル提案
適切な照明を施した和風庭園は、夜の新たな生活空間として活用できます。縁側や濡れ縁から照明された庭を眺めながら、お茶を楽しんだり、読書をしたりする時間は、日中の慌ただしさから解放される貴重なひとときです。
夏の夕涼みには、庭に面した窓を開け放ち、虫の音を聞きながら照明された庭を眺めるのも風流です。風鈴の音と相まって、日本の夏の風情を存分に味わえます。
また、小規模なガーデンパーティーや家族での夕食を、照明された庭を背景に楽しむこともできます。和風庭園の落ち着いた雰囲気は、特別な日のおもてなしにも最適です。ゲストを招いた際、美しくライトアップされた庭は、印象的な思い出を作る舞台となるでしょう。
月明かりの夜には、照明を控えめにして自然の光を楽しむのも一興です。満月の晩には人工照明を最小限にし、月の光で庭を眺める「月見」の伝統を現代に蘇らせることができます。このように、照明の調整機能を活用することで、様々なシーンに対応した夜の庭の楽しみ方が可能になります。
まとめ:和風庭園の夜間照明で広がる新しい楽しみ
和風庭園の照明演出は、単に暗い庭を明るくするだけではありません。適切な照明計画によって、昼間とは全く異なる表情を持つ新たな空間を創造し、庭の楽しみ方を大きく広げることができます。
光源を見せない間接照明の原則、樹木や水景に合わせた適切な色温度と明るさの選択、近隣への配慮と光害対策、そして季節ごとの演出の変化など、考慮すべき点は多岐にわたります。しかし、これらのポイントを押さえることで、プロフェッショナルな仕上がりの照明空間を実現できます。
照明器具の技術も進化し続けており、省エネで長寿命のLED照明や、スマートフォンで調光できるスマート照明なども登場しています。これらの新技術を活用しつつ、日本の伝統的な美意識を大切にすることで、現代のライフスタイルに合った和風庭園の夜の楽しみ方が実現できるでしょう。
夜の庭は、もう一つの庭です。照明によって引き出される陰影と光の織りなす美しさは、和風庭園の新たな魅力を発見させてくれます。ぜひこの記事を参考に、あなたの庭に最適な照明計画を立て、夜の庭の楽しみを見つけてください。





