庭世界庭世界
土づくり・堆肥・肥料の基礎知識と実践ガイド

土壌pHの測定と酸性・アルカリ性の調整方法

2026年2月6日

土壌pHの測定と酸性・アルカリ性の調整方法

土壌pHの測定方法から酸性・アルカリ性の調整まで詳しく解説。石灰資材の選び方、施用量の目安、注意点など、初心者にもわかりやすく説明します。家庭菜園で適切なpH管理を行い、植物の健全な成長と豊かな収穫を実現しましょう。

土壌pHの測定と酸性・アルカリ性の調整方法

土壌のpH(水素イオン濃度)は、植物の健全な成長に欠かせない重要な要素です。適切なpH値でなければ、植物は土壌中の養分を十分に吸収できず、生育不良や病害の原因となることがあります。この記事では、土壌pHの基礎知識から測定方法、そして酸性・アルカリ性の調整方法まで、初心者にもわかりやすく解説します。

土壌pHの基礎知識:なぜpH管理が重要なのか

土壌pHは0~14の数値で表され、7が中性、5.0以下が強酸性、7.0以上がアルカリ性となります。pHが1変わると水素イオン濃度は10倍変化するため、わずかな数値の違いでも植物への影響は大きくなります。

ほとんどの野菜はpH5.5~7.0程度の弱酸性から中性の土壌を好みます。例えば、トマトやナスキュウリはpH6.0~6.5、ブルーベリーやツツジはpH4.5~5.5の酸性土壌を好む一方、ホウレンソウやアスパラガスはpH6.5~7.5のやや高めのpHを好みます。

土壌pHが適正範囲から外れると、以下のような問題が発生します:

  • 酸性すぎる場合リン酸やカルシウム、マグネシウムなどの養分が不溶化し、植物が吸収できなくなります。また、アルミニウムやマンガンが過剰に溶け出し、根に障害を与えることがあります。
  • アルカリ性すぎる場合:鉄やマンガン、亜鉛などの微量要素が不溶化し、欠乏症状が現れます。

土づくり・堆肥・肥料の基礎知識と実践ガイドでは、pHと連動した総合的な土壌管理について詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

土壌pH測定の方法:2つの主要アプローチ

土壌pHを正確に把握するには、適切な測定方法を選ぶことが重要です。ここでは、家庭菜園でも実践できる2つの主要な測定方法を紹介します。

土壌pH測定の方法:2つの主要アプローチ - illustration for 土壌pHの測定と酸性・アルカリ性の調整方法
土壌pH測定の方法:2つの主要アプローチ - illustration for 土壌pHの測定と酸性・アルカリ性の調整方法

上澄み液法(標準的な測定法)

従来から使われている方法で、最も正確な測定ができる方法です。

手順:

  1. 土壌サンプルを採取し、乾燥させて細かく砕きます
  2. 土1に対して蒸留水2.5の割合で混ぜます(例:土10g、蒸留水25ml)
  3. 約30分間振とうして土と水をよく混ぜます
  4. 沈殿するのを待ち、上澄み液にpH電極を浸けて測定します

この方法は実験室レベルの精度が得られますが、時間と手間がかかります。アースチェック液のような市販のpH測定キットを使えば、同様の原理で簡単に測定できます。

ダイレクト測定法(簡易測定法)

土壌用pH計の電極(センサー)を直接土に突き刺して測定する方法で、少ない手間と時間で手軽に測定できます。

手順:

  1. 測定する土壌を適度に湿らせます(乾燥している場合)
  2. pH計の電極を土に5~10cm程度差し込みます
  3. 数分待って数値が安定したら読み取ります

ダイレクト測定法は便利ですが、測定値が上澄み液法より±0.5程度ずれることがあります。また、土が乾燥しすぎていたり、石が多い場所では正確な測定が難しいため、複数箇所で測定して平均値を取ることをおすすめします。

最新の測定技術

2024年の研究では、分光光度法がガラス電極法の代替手段として注目されています。指示薬を土壌抽出液に加えて分光光度計で測定する方法で、電極のドリフトや液間接合効果がない利点があります。将来的には、リモートセンシングや赤外線技術を使った非接触測定も実用化が進んでおり、より迅速で正確な測定が可能になると期待されています。

酸性土壌をアルカリ性に調整する方法

日本の土壌は雨が多いため、自然と酸性に傾く傾向があります。酸性土壌を中性~弱アルカリ性に調整するには、石灰資材を施用します。

酸性土壌をアルカリ性に調整する方法 - illustration for 土壌pHの測定と酸性・アルカリ性の調整方法
酸性土壌をアルカリ性に調整する方法 - illustration for 土壌pHの測定と酸性・アルカリ性の調整方法

石灰資材の種類と特徴

石灰の種類pH矯正力マグネシウム施用後の待機期間特徴
消石灰高いなし1~2週間効果が早いが扱いに注意が必要
苦土石灰中程度あり数日~1週間最も一般的で扱いやすい
有機石灰穏やか製品によるすぐ初心者におすすめ、効果は緩やか
炭酸石灰中程度なし数日~1週間純粋な炭酸カルシウム

施用量の目安

pHの数値を1上げるには、1㎡あたり以下の量を目安とします:

  • 壌質土:苦土石灰100~200g、消石灰80~120g
  • 砂質土(保肥力が弱い):苦土石灰100g、消石灰80g
  • 粘土質土(保肥力が強い):苦土石灰300g、消石灰150g

ただし、一度に大量の石灰を施用すると土壌バランスが崩れるため、pHを1以上上げたい場合は、数回に分けて施用することをおすすめします。

石灰施用時の重要な注意点

1. 堆肥・肥料との同時施用を避ける

石灰資材は堆肥や肥料と同時に入れてはいけません。特に窒素肥料と混ぜると、反応が強すぎてアンモニアが揮発したり、根に悪影響が出ることがあります。基本的には、石灰を施して1~2週間後に堆肥や肥料を入れるようにしましょう。

2. 作物ごとの適性pHを確認する

例えば、ジャガイモはpH6.0前後の弱酸性を好み、アルカリ性に傾きすぎると「そうか病」にかかりやすくなります。石灰の入れすぎには十分注意が必要です。

3. 均一に混ぜる

石灰は表面に撒くだけでなく、深さ10~15cmまでよく耕して混ぜ込むことが重要です。部分的に濃度が高いと、その場所だけpHが極端に高くなり、植物の根を傷める原因になります。

アルカリ性土壌を酸性に調整する方法

アルカリ性土壌の酸性化は、酸性土壌の改良より難しいのが現実です。しかし、ブルーベリーやツツジなど酸性を好む植物を育てる場合は、以下の方法で対処できます。

アルカリ性土壌を酸性に調整する方法 - illustration for 土壌pHの測定と酸性・アルカリ性の調整方法
アルカリ性土壌を酸性に調整する方法 - illustration for 土壌pHの測定と酸性・アルカリ性の調整方法

酸性資材の施用

硫黄粉・硫黄華

最も効果的な酸性化資材です。土壌中の微生物によって硫黄が硫酸に変化し、pHを下げます。ただし、効果が現れるまで数週間~数ヶ月かかるため、栽培の2~3ヶ月前に施用する必要があります。

施用量の目安:土の容量に対して20~30%程度の量を混ぜることで、pHが0.2~1.0ほど酸性に傾きます。

硫安(硫酸アンモニウム)

窒素肥料としても使える酸性資材です。硫黄粉よりも効果が早く現れますが、過剰施用は塩類集積を招くため注意が必要です。

ピートモス

有機質の酸性資材で、pH3.5~4.5程度の強酸性です。土壌に混ぜることでpHを下げるだけでなく、保水性や通気性も改善します。ブルーベリーやツツジ類の植え付けに特に適しています。

生物的方法:クリーニングクロップ

トウモロコシやソルゴーなどの「クリーニングクロップ」と呼ばれる作物を栽培して、土壌中のアルカリ分を吸収除去する方法もあります。即効性はありませんが、環境に優しく、土壌の物理性も改善できる利点があります。

pH調整の実践スケジュール

適切なpH調整を行うには、計画的なスケジュールが重要です。

秋~冬(準備期)

  1. pH測定:複数箇所を測定して平均値を把握
  2. 目標pH設定:育てる作物に応じた目標値を決定
  3. 石灰施用(酸性の場合):土壌を耕しながら石灰を混ぜ込む
  4. 冬の間に安定化:雨や雪で石灰が土壌に馴染む

春(植え付け前)

  1. 再測定:pHが目標範囲内かチェック
  2. 微調整:必要に応じて少量の石灰を追加
  3. 堆肥・肥料施用:石灰施用から2週間以上経過後
  4. 最終耕起:全体を均一に混ぜる

夏~秋(栽培中)

  1. 定期的なモニタリング:月1回程度pH測定
  2. 追加調整:大きなずれがあれば追肥時に微調整

家庭菜園・野菜づくりの完全ガイドでは、季節ごとの土壌管理スケジュールをより詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。

よくある質問とトラブルシューティング

Q1: 石灰を入れすぎてしまった場合の対処法は?

石灰の過剰施用でpHが高くなりすぎた場合は、以下の方法で対処できます:

  • 硫黄粉の少量施用:pH0.5程度下げる場合は、1㎡あたり50~100gの硫黄粉を施用
  • ピートモスの混入:土の容量の10~20%のピートモスを混ぜ込む
  • クエン酸水の散布:応急処置として、クエン酸小さじ1を1Lの水に溶かして散布
  • 時間をかけて自然に低下:雨で石灰が流れ、2~3ヶ月で徐々に下がることが多い

Q2: pHが安定しない理由は?

測定のたびにpHが大きく変わる場合は、以下の原因が考えられます:

  • 測定場所の不統一:同じ畑でも場所によってpHは0.5~1.0異なることがあります。常に同じ場所、同じ深さで測定しましょう。
  • 水分量の違い:土が乾燥しているとpHが高く、湿っているとpHが低く測定されます。
  • 測定器具の不良:電極式pH計は定期的な校正が必要です。標準液(pH4.0、7.0)で校正しましょう。

Q3: 連作するとpHはどう変化する?

連作すると一般的にpHは徐々に低下します。これは、植物が養分を吸収する際に水素イオンを放出するためです。ナス科やウリ科の野菜は特にpH低下が顕著なので、毎年石灰で調整する必要があります。

まとめ:健全な土壌pHで豊かな収穫を

土壌pHの適切な管理は、植物の健全な成長と豊かな収穫の基礎となります。要点をまとめると:

  1. 定期的な測定:年2回(春と秋)はpHを測定して現状を把握する
  2. 作物に合わせた調整:育てる植物の適正pHを確認して目標を設定
  3. 石灰資材の選択:初心者には苦土石灰や有機石灰が扱いやすい
  4. 堆肥との分離:石灰施用後1~2週間は堆肥や肥料を入れない
  5. 段階的な調整:pHを大きく変える場合は数回に分けて施用

pH管理は難しく感じるかもしれませんが、測定と調整を繰り返すうちに、自分の畑の特性や必要な資材量が感覚的にわかるようになります。季節の園芸カレンダー病害虫対策と防除の完全ガイドも合わせて活用して、総合的な土壌管理を実践してください。

健康な土壌が、美しい花と豊かな実りをもたらしてくれるでしょう。

関連記事