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病害虫対策と防除の完全ガイド

殺虫剤・殺菌剤の種類と安全な使い方

2026年2月6日

殺虫剤・殺菌剤の種類と安全な使い方

ガーデニングに欠かせない殺虫剤・殺菌剤の種類、選び方、安全な使用方法を詳しく解説。スプレー剤・液剤・粒剤の特徴、ローテーション散布の重要性、環境への配慮まで、正しい知識で植物を守る方法をご紹介します。

殺虫剤・殺菌剤の種類と安全な使い方

ガーデニングや家庭菜園を楽しむ上で、植物を害虫や病気から守ることは非常に重要です。殺虫剤と殺菌剤は、それぞれ異なる役割を持ちながら、植物の健康を維持するための強力なツールとなります。本記事では、殺虫剤・殺菌剤の種類、選び方、そして安全な使用方法について詳しく解説します。日本で使用が許されている農薬は厳しい安全性試験が行われてから登録が許可されるため、正しい知識を持って使用すれば安心して活用できます。

病害虫対策と防除の完全ガイドでは、総合的な病害虫管理について詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

殺虫剤と殺菌剤の違いと役割

殺虫剤と殺菌剤は、それぞれ異なる目的で使用される薬剤です。正しい使い分けが、効果的な植物保護につながります。

殺虫剤の役割

殺虫剤は、植物に害を与える害虫を退治したり、侵入を防ぐための薬剤です。アブラムシ、ハダニ、カメムシ、コナジラミ、アザミウマなどの害虫に対して有効で、害虫の種類や生育段階に応じて適切な製品を選ぶことが重要です。

殺虫剤には、接触毒(害虫に直接触れることで効果を発揮)、食毒(害虫が植物を食べることで体内に取り込まれる)、浸透移行性(植物体内に吸収され、その植物を食べた害虫に効果を発揮)などの作用機構があります。

殺菌剤の役割

殺菌剤は、植物に病気を引き起こす菌やカビを防ぐための薬剤です。うどんこ病、灰色かび病、黒星病、べと病などの病原菌による被害を抑制します。殺菌剤には予防効果と治療効果があり、病気の発生前に使用する予防剤と、発生後に使用する治療剤に分類されます。

土づくり・堆肥・肥料の基礎知識と実践ガイドで解説しているように、健康な土づくりは病気予防の基本となります。

殺虫殺菌剤とは

殺虫殺菌剤は、害虫の駆除と病原菌の防除の両方の効果を兼ね備えた薬剤です。一つの製品で複数の問題に対処できるため、家庭園芸では特に便利です。ベニカXファインスプレーなどが代表的な製品として知られており、幅広い植物に使用できます。

殺虫剤・殺菌剤の主な種類と特徴

薬剤にはさまざまな剤型があり、用途や散布面積に応じて選択することが重要です。

殺虫剤・殺菌剤の主な種類と特徴 - illustration for 殺虫剤・殺菌剤の種類と安全な使い方
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剤型特徴適した用途メリットデメリット
スプレー希釈不要で手軽少数の鉢植え、スポット散布すぐに使える、簡単コストが高い、広範囲には不向き
液剤・水和剤水で希釈して使用広い庭、多数の植物経済的、大量散布可能希釈の手間、噴霧器が必要
粉剤そのまま散布土壌処理、局所散布希釈不要、保存が容易飛散しやすい、吸入注意
粒剤土に混ぜる・まく長期予防、土壌害虫効果が長続き、手軽即効性は低い
エアゾール剤ガス噴射式ハウス内、局所的な害虫ピンポイントで使える高コスト、環境負荷

化学合成農薬

化学合成された成分を主体とする薬剤で、効果が高く即効性があります。登録番号の記載されている薬剤を選ぶのが基本であり、ラベルには使用できる植物名、効果のある病害虫名、使用方法が詳細に記載されています。

天然由来成分の薬剤

天然由来成分を使用した製品(例:ベニカナチュラルスプレー)は、環境への負荷が少なく、有機栽培にも使用できるものがあります。ただし、化学合成農薬に比べて効果の持続期間が短い場合があります。

家庭菜園・野菜づくりの完全ガイドでは、有機栽培における天然由来農薬の活用について詳しく解説しています。

生物農薬

天敵昆虫や微生物を利用した農薬で、特定の害虫や病原菌にのみ作用します。環境負荷が極めて低く、薬剤耐性が発生しにくい利点があります。

殺虫剤・殺菌剤の選び方

効果的な病害虫防除のためには、適切な薬剤選択が不可欠です。

殺虫剤・殺菌剤の選び方 - illustration for 殺虫剤・殺菌剤の種類と安全な使い方
殺虫剤・殺菌剤の選び方 - illustration for 殺虫剤・殺菌剤の種類と安全な使い方

対象病害虫を特定する

まず、退治したい病害虫をはっきりさせることが重要です。薬剤は害虫を退治する殺虫剤と病気を治療する殺菌剤に大別され、それぞれ広範囲の害虫(病気)に効く薬剤と特定の病害虫に効く専門薬があります。

葉に穴が開いている場合は食害性害虫(アオムシ、ヨトウムシなど)、葉が黄色く変色している場合は吸汁性害虫(アブラムシ、ハダニなど)、葉に白い粉がついている場合はうどんこ病といった具合に、症状から原因を推測します。

使用植物との適合性を確認

農薬のラベルには「適用作物」が記載されています。バラ、野菜、果樹など、使用したい植物に登録があるかを必ず確認しましょう。登録のない植物に使用すると、薬害が出る可能性があります。

剤型と容量を選ぶ

散布面積や使い勝手などを考慮し、有効期限内で使い切れる容量の製品を購入するようにしましょう。ベランダガーデニングや少数の鉢植えにはスプレー剤が便利ですが、広い庭や多数の植物には希釈タイプが経済的です。

ベランダ・小スペースガーデニングの完全ガイドでは、限られたスペースでの効率的な薬剤使用について解説しています。

安全性と環境への配慮

ペットや子どもがいる家庭、食用植物に使用する場合は、安全性の高い製品を選びましょう。収穫前使用日数(収穫の何日前まで使用できるか)も重要な確認ポイントです。

殺虫剤・殺菌剤の安全な使用方法

正しい使用方法を守ることで、効果を最大化し、安全性を確保できます。

殺虫剤・殺菌剤の安全な使用方法 - illustration for 殺虫剤・殺菌剤の種類と安全な使い方
殺虫剤・殺菌剤の安全な使用方法 - illustration for 殺虫剤・殺菌剤の種類と安全な使い方

使用前の準備

ラベルを必ず読み、使用方法、希釈倍数、使用時期、使用回数などを確認します。使用方法を誤ると薬害が出たり効果が得られないため、この準備は極めて重要です。

保護具(マスク、手袋、長袖の服、保護メガネ)を着用し、皮膚や目、呼吸器への接触を防ぎます。特に粉剤やエアゾール剤を使用する際は、吸入に注意が必要です。

散布のタイミングと方法

早朝や夕方など、気温が低く風の少ない時間帯に散布すると効果的です。高温時の散布は薬害のリスクが高まり、強風時は薬剤が流れたり飛散したりするため避けましょう。

雨の直前の散布も避けるべきです。散布後すぐに雨が降ると、薬剤が流れ落ちて効果が得られません。天気予報を確認し、晴天が続く日を選びましょう。

対象の植物全体に均一にスプレーすることが重要です。特に葉の裏側は害虫が潜みやすいためしっかりと噴霧します。過剰噴霧すると、中に入っている成分や溶剤などにより薬害が出る可能性があるので注意してください。

ローテーション散布の重要性

病気の防除に同じ種類の殺菌剤を使い続けると、薬剤耐性菌が現れて効果が低下する場合があります。異なる種類(異なる系統)の薬剤を用意しておき、散布のたびに薬剤を変える「ローテーション散布」が有効です。

国際的な研究によると、トリアゾール系殺菌剤の使用は2006年から2018年の間に450%以上増加しており、薬剤耐性の問題が深刻化しています。これは、同一系統の薬剤を連続使用することの危険性を示しています。

混用と希釈の注意点

複数の薬剤を混用する場合は、混用可否表を確認しましょう。相性の悪い組み合わせでは、効果が減少したり薬害が発生したりすることがあります。

希釈倍数は必ず守り、「濃いほど効く」という誤解で規定以上に濃くすると、植物に薬害が出ます。逆に薄すぎると効果が得られず、薬剤耐性の原因にもなります。

殺虫剤・殺菌剤使用時の注意点と安全対策

安全な使用のためには、いくつかの重要な注意点があります。

殺虫剤・殺菌剤使用時の注意点と安全対策 - illustration for 殺虫剤・殺菌剤の種類と安全な使い方
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人体への影響を最小化

散布中や散布直後は、処理した場所に近づかないようにします。特に子どもやペットが誤って触れたり吸い込んだりしないよう、立ち入りを制限しましょう。

作業後は、手や顔をよく洗い、うがいをします。衣服に薬剤が付着した場合は、すぐに着替えて洗濯しましょう。

万が一、誤飲や大量に吸い込んだ場合は、すぐに医師の診察を受けます。その際、使用した薬剤のラベルや容器を持参すると、適切な処置を受けやすくなります。

環境への配慮

河川や池の近くでの散布は、水生生物への影響を考慮して慎重に行います。殺菌剤は蜂にさまざまな悪影響を及ぼすことが研究で明らかになっており、蜂の発達、行動、免疫、繁殖に影響します。開花期の散布は特に注意が必要です。

使用後の容器や余った薬剤は、自治体の指示に従って適切に処分します。絶対に河川や下水に流さないようにしましょう。

保管方法

直射日光を避け、子どもの手の届かない冷暗所に保管します。食品と区別し、専用の保管場所を設けることが望ましいです。

有効期限を確認し、期限切れの薬剤は使用しないようにします。効果が低下するだけでなく、品質変化により予期しない問題が発生する可能性があります。

記録の重要性

いつ、どの薬剤を、どの植物に、どのくらいの量使用したかを記録しておくと、効果の確認や問題発生時の原因究明に役立ちます。特に食用植物では、収穫時期の判断にも必要です。

おすすめの殺虫殺菌剤と使用場面

家庭園芸でよく使用される代表的な製品をご紹介します。

一般家庭向け総合タイプ

ベニカXファインスプレーは、幅広い植物に使えて、殺虫殺菌剤なので害虫にも病気にも効果的です。アブラムシ、ハダニ、うどんこ病、黒星病など、家庭園芸で頻繁に遭遇する問題に対応できます。

バラ栽培では、アブラムシやうどんこ病が頻発するため、こうした総合タイプの殺虫殺菌剤が特に重宝します。バラの育て方完全ガイドでは、バラ特有の病害虫管理について詳しく解説しています。

天然由来成分タイプ

ベニカナチュラルスプレーは、天然由来成分を使用しており、虫や病気にも対応できます。有機栽培を目指す方や、ペット・子どものいる家庭に適しています。

広範囲散布用

広い庭や多数の植物を管理する場合は、希釈タイプの液剤や水和剤が経済的です。噴霧器を使用して効率的に散布できます。

ガーデニングツール・資材の完全ガイドでは、効果的な散布に役立つ噴霧器の選び方について解説しています。

土壌処理用

センチュウやコガネムシ幼虫など、土壌中の害虫には粒剤タイプが有効です。植え付け時や生育期に土に混ぜ込むことで、長期間の予防効果が得られます。

まとめ:効果的で安全な殺虫剤・殺菌剤の活用

殺虫剤と殺菌剤は、正しく使用すれば植物を守る強力な味方となります。重要なポイントをまとめます。

まず、対象となる病害虫を正確に特定し、それに適した薬剤を選択することが基本です。ラベルの「適用病害虫」と「適用作物」を必ず確認しましょう。

使用方法については、希釈倍数、使用時期、使用回数などを厳守することが重要です。過剰使用は薬害や環境負荷の原因となり、不足は効果不十分や薬剤耐性につながります。

安全性の確保も忘れてはいけません。保護具の着用、適切な散布時間の選択、使用後の手洗いなど、基本的な安全対策を徹底しましょう。

ローテーション散布により、薬剤耐性の発生を防ぎます。同じ系統の薬剤を連続使用せず、異なる作用機構の薬剤を交互に使用することで、長期的な効果を維持できます。

環境への配慮も重要です。蜂などの有益な昆虫への影響を最小限にするため、開花期の散布は避け、必要最小限の使用にとどめましょう。

季節の園芸カレンダーを参考に、病害虫が発生しやすい時期を把握し、予防的な対策を講じることで、薬剤の使用量を減らすことができます。

最後に、薬剤に頼りすぎず、健康な土づくり、適切な水やり、風通しの良い配置など、基本的な栽培管理を徹底することが、病害虫に強い植物を育てる最も確実な方法であることを忘れないでください。正しい知識と適切な使用法により、美しく健康な庭を維持しましょう。

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