茶庭(露地)の設計と作り方ガイド
2026年2月6日

茶庭(露地)の歴史、設計原則、実践的な作り方を完全解説。千利休の「渡り六分、景四分」の原則に基づく飛び石・蹲踞・石灯籠などの要素配置、苔の育て方、現代住宅への応用まで、初心者から上級者まで役立つ実践的な完全ガイドです。
茶庭(露地)の設計と作り方ガイド
茶庭(露地)は、茶室へと至る通路として造られた日本庭園の伝統的な様式です。千利休によってわび・さびを基調とした美学へと昇華され、現代でも多くの茶道愛好家や庭園デザイナーに愛され続けています。本記事では、露地の歴史的背景から設計の基本原則、実際の作り方まで、初心者から上級者まで役立つ包括的なガイドを提供します。
露地(茶庭)とは何か
露地(ろじ)は、茶室へ至る通路として機能する庭園であり、「茶庭」(ちゃてい・ちゃにわ)とも呼ばれます。もともと室町時代には茶室への通路を単に「路地」と呼んでいましたが、茶聖・千利休がわび茶の理念に基づき、より精神性の高い「露地」へと発展させました。
露地という言葉には仏教的な意味も込められており、「煩悩や束縛を脱却した境地」を表します。茶の湯を実践する場として、世俗の塵埃を離れ清浄無垢の境地に至るという理想が込められているのです。
造園・ガーデンデザインの基本と実践ガイドで解説している日本庭園の設計原則は、露地においても重要な基盤となります。特に「市中の山居」という概念は、都会の喧騒の中に山里の風情を表現する露地の本質を示しています。
露地の歴史と千利休の美学
露地の発展は室町時代から安土桃山時代にかけて、茶道の確立とともに進みました。特にSen no Rikyū(千利休)は1573年から1603年の桃山時代にわび茶を完成させ、露地の様式を確立しました。
千利休が提唱した「わび・さび」の美学は、華美を避け簡素で質素な中に美を見出すものです。この理念は露地のデザインにも反映され、豪華な池泉庭園とは対照的に、飛び石や延段、蹲踞といった実用的な要素を美的に配置する手法が特徴となっています。
利休の有名な格言に「渡り六分、景四分」(わたりろくぶん、けいよんぶん)があります。これは露地の飛び石を配置する際、実用性に6割、景観に4割の配慮をすべきという教えです。このバランス感覚は、現代の露地設計においても重要な指針となっています。
露地の基本構成要素
露地を構成する主要な要素には、以下のようなものがあります。それぞれが独自の役割と象徴的な意味を持っています。
| 要素 | 名称 | 役割と意味 |
|---|---|---|
| 飛び石 | 飛石(とびいし) | 歩行路として機能し、「露(悟り)への道」を象徴する |
| 延段 | 延段(のべだん) | 広い通路部分で、自然石と切石のバランスで表情を作る |
| 手水鉢 | 蹲踞(つくばい) | 身を清める場所。石・陶器・木桶など多様な形状がある |
| 灯籠 | 石灯籠(いしどうろう) | 照明と「知識の光」を象徴。千利休が導入した |
| 竹垣 | 竹垣(たけがき) | 空間を区切り、内と外の境界を示す |
| 苔 | 苔(こけ) | 地被植物として露地の雰囲気を作る重要要素 |

| 要素 | 名称 | 役割と意味 |
|---|---|---|
| 飛び石 | 飛石(とびいし) | 歩行路として機能し、「露(悟り)への道」を象徴する |
| 延段 | 延段(のべだん) | 広い通路部分で、自然石と切石のバランスで表情を作る |
| 手水鉢 | 蹲踞(つくばい) | 身を清める場所。石・陶器・木桶など多様な形状がある |
| 灯籠 | 石灯籠(いしどうろう) | 照明と「知識の光」を象徴。千利休が導入した |
| 竹垣 | 竹垣(たけがき) | 空間を区切り、内と外の境界を示す |
| 苔 | 苔(こけ) | 地被植物として露地の雰囲気を作る重要要素 |
これらの要素はガーデニング入門・基礎知識の完全ガイドで紹介している一般的な庭づくりの技術に加え、茶道の精神性を反映した配置が求められます。
蹲踞(手水鉢)の選び方
蹲踞は露地において特に重要な要素です。石製が最も伝統的ですが、木桶や陶器、金属製など様々な形状があります。茶室や露地全体の雰囲気に合わせて選ぶことが大切で、それぞれが庭園の美しさや雰囲気を引き立てる役割を果たします。
蹲踞の周りには一般的に以下のような石組みが配置されます:
- 前石:蹲踞の前に置かれ、使用者が立つ場所
- 湯桶石:湯桶を置くための石
- 手燭石:手燭(照明)を置くための石
露地の設計プロセス
露地を設計する際には、以下のステップを踏むことが推奨されます。

1. 事前リサーチと計画
露地の設計にあたっては、まず以下の情報を明確にする必要があります:
- 使用目的:日常的な茶事か、特別な客人のためか
- 招く客人の人数と客層:何人程度を想定するか
- 手入れの頻度と人数:維持管理にどれだけのリソースを割けるか
- 敷地の条件:日当たり、水はけ、既存の樹木など
2. 空間の区画設定
露地は一般的に「外露地」と「内露地」に分けられます。両者の境界には「中門」や「中潜り」と呼ばれる門が設置され、精神的な浄化のプロセスを段階的に進める構造になっています。
3. 飛び石と延段の配置
千利休の「渡り六分、景四分」の原則に従い、まず実用的な動線を確保した上で、美的な配慮を加えます。飛び石の配置では、歩幅を考慮しつつ、自然な曲線を描くように配置することが重要です。
延段は自然石と切石のバランスや目地の処理方法によって、庭全体の方向性を表現できます。実用性だけを優先すると美観が損なわれるため、常にバランスを意識しましょう。
4. 植栽の選定
露地の植栽は「市中の山居」の風情を表現することが求められます。土づくり・堆肥・肥料の基礎知識を参考に、適切な土壌を準備した上で、以下のような植物を選定します:
- 常緑樹:マツ、モミジ、ツバキなど
- 下草:シダ類、ツワブキなど
- 地被植物:苔類(特にハイゴケ)
5. 石造品と竹垣の設置
蹲踞や石灯籠などの石造品は、露地の雰囲気を大きく左右します。また竹垣は空間を区切り、内外の境界を示す重要な役割を果たします。
苔の育て方と管理
地被植物として苔を使うと、それだけで露地らしい雰囲気が生まれます。特にハイゴケは育てやすくおすすめです。
ハイゴケは半日陰から日当たりの良い場所まで幅広く育ちますが、乾燥を嫌うため水やりには注意が必要です。特に夏場は朝夕の水やりを欠かさないようにしましょう。
苔の管理については芝生の手入れと管理の完全ガイドで紹介している地被植物の管理技術も参考になります。定期的な除草と適度な湿度管理が、美しい苔庭を維持する鍵となります。
現代における露地の応用
現代の住宅事情では、伝統的な露地を完全に再現することは難しい場合もあります。しかし露地の精神性や美学は、ベランダ・小スペースガーデニングにおいても応用可能です。
小さな坪庭や玄関アプローチに露地の要素を取り入れることで、日常空間に非日常的な美と静寂を生み出すことができます。蹲踞一つ、飛び石数個だけでも、わび・さびの世界観を表現することは可能なのです。
まとめ
茶庭(露地)は、千利休によって完成されたわび茶の精神を体現する庭園様式です。「渡り六分、景四分」の原則のもと、実用性と美観のバランスを取りながら、「市中の山居」の風情を表現します。
設計の際には使用目的や客層、手入れ頻度などを事前にリサーチし、飛び石・延段・蹲踞・石灯籠・苔などの要素を適切に配置することが重要です。現代の住宅においても、露地の美学を部分的に取り入れることで、日常に静寂と美を添えることができるでしょう。





