日陰の芝生対策と代替グランドカバー
2026年2月6日

美しい芝生を夢見て庭づくりを始めたものの、大きな木の下や建物の影になる場所では、芝生がうまく育たないという悩みを持つ方は少なくありません。実は、**日光が1日6時間以下の環境では、どんな芝生品種でも健全な成長が難しい**というのが園芸学の常識です。しかし、がっかりする必要はありません。日陰でも美しい緑の絨毯を実現できる
日陰の芝生対策と代替グランドカバー
美しい芝生を夢見て庭づくりを始めたものの、大きな木の下や建物の影になる場所では、芝生がうまく育たないという悩みを持つ方は少なくありません。実は、日光が1日6時間以下の環境では、どんな芝生品種でも健全な成長が難しいというのが園芸学の常識です。しかし、がっかりする必要はありません。日陰でも美しい緑の絨毯を実現できる代替グランドカバーが数多く存在します。
本記事では、日陰で芝生が育たない理由から、科学的根拠に基づいた代替植物の選び方、具体的なおすすめ品種、そして実際の植栽方法まで、日陰の庭を美しく彩るための実践的な情報を網羅的に解説します。芝生の手入れと管理の完全ガイドと併せて読むことで、より深い理解が得られるでしょう。
なぜ日陰で芝生が育たないのか?科学的背景
芝生が日陰で育たない理由は、光合成のメカニズムに深く関わっています。芝生植物(特に一般的な芝生品種)は、C4型光合成を行う植物が多く、これは強い日光を効率的に利用するシステムです。日光が不足すると、光合成による炭水化物生成が減少し、根の発達が阻害され、病害虫への抵抗力も低下します。

アメリカの研究機関による大規模な試験では、1日の日照時間が6時間を下回ると、芝生の生育は著しく悪化することが実証されています(Michigan State University)。具体的な症状としては:
- 葉が徒長し、薄く弱々しくなる:光を求めて縦に伸びるため、密度が低下
- 根系の発達不良:地上部に栄養が偏り、乾燥や踏圧に弱くなる
- 病害の多発:日陰は湿度が高く、菌類病害(さび病、葉腐病など)が発生しやすい
- 雑草の侵入:芝生の密度低下により、日陰を好む雑草が繁茂
日陰対応を謳う「耐陰性芝生」品種(クリーピングレッドフェスク等)も存在しますが、それでも半日陰(1日4〜6時間の日照)が限界であり、濃い日陰では満足な結果は得られません。そのため、日陰の庭では芝生の代わりにグランドカバー植物を選択することが、現実的で持続可能な解決策となります。
この問題については土づくり・堆肥・肥料の基礎知識と実践ガイドで土壌改良の観点からも詳しく解説しています。
日陰向けグランドカバーの選び方:5つの重要ポイント
日陰に適したグランドカバーを選ぶ際は、以下の5つの基準を総合的に評価することが重要です。

1. 日照条件の正確な把握
まず自分の庭の日照状況を正確に把握しましょう。日陰には3つのレベルがあります:
- 明るい日陰(Partial Shade):1日3〜6時間の直射日光、または一日中明るい間接光
- 半日陰(Light Shade):1日2〜4時間の直射日光、午前または午後のみ日が当たる
- 完全な日陰(Full Shade):1日2時間以下の直射日光、ほぼ一日中日陰
植物の耐陰性は品種によって大きく異なるため、この分類に基づいて適切な植物を選ぶことが成功の鍵です(Iowa State University Extension)。
2. 踏圧耐性の確認
芝生の大きな利点は「歩ける」ことです。グランドカバーで同じ機能を求める場合、踏圧耐性(Foot Traffic Tolerance)が重要になります。
研究によれば、多くの日陰耐性グランドカバーは踏圧に弱いため、人が頻繁に歩く場所では、飛び石や通路を設置する設計が推奨されています(Gardening Know How)。
踏圧に強い品種としては:
- コケ類(モス):低〜中程度の踏圧に耐える
- クリーピングタイム:軽い踏圧に対応
- クラピア:半日陰で中程度の踏圧に強い
3. 生育速度と被覆力
早く地面を覆いたい場合は生育速度の速い種類を、じっくり育てたい場合は遅めの種類を選びます。
| 生育速度 | 代表的な植物 | 特徴 |
|---|---|---|
| 速い | クラピア、ツルニチニチソウ、アジュガ | 1〜2年で地面を覆う。雑草抑制効果が早期に発揮される |
| 中程度 | 玉竜、ヒューケラ、ギボウシ | 2〜3年で安定。バランスが良く管理しやすい |
| 遅い | エピメディウム、モス | 3年以上かかるが、一度確立すると非常に安定 |
4. 土壌条件への適合性
日陰の庭は往々にして酸性で腐植質に富んだ土壌になりがちです。これは落ち葉の堆積によるもので、多くの日陰植物(特に林床植物)はこの環境を好みます(University of Florida Extension)。
土壌pH、排水性、有機物含量を事前に調査し、植物の要求に合った土壌改良を行うことが重要です。土づくり・堆肥・肥料の基礎知識と実践ガイドでは、具体的な土壌改良方法を詳しく解説しています。
5. メンテナンス要求度
グランドカバーの大きな利点は、一度確立すると芝生より管理が楽な点です。研究では、日陰耐性グランドカバーは確立後、芝生よりも少ない管理で雑草に勝る性能を発揮することが確認されています(Iowa State University)。
刈り込み不要、または年に1〜2回程度の手入れで済む品種を選ぶことで、長期的な労力を大幅に削減できます。
日陰に強いおすすめグランドカバー植物12選
科学的研究と実践的経験に基づき、日陰条件で優れた性能を発揮するグランドカバー植物を厳選して紹介します。国内外の専門機関が推奨する品種を中心に、日本の気候でも育てやすいものを選定しました。

常緑性・高耐陰性グループ
1. 玉竜(タマリュウ/Ophiopogon japonicus 'Nanus')
日本原産の常緑多年草で、日陰のグランドカバーとして最も信頼性が高い植物の一つです。
- 耐陰性:半日陰〜完全な日陰に対応
- 草丈:5〜10cm(刈り込み不要)
- 特徴:暑さ・寒さに強く、-15℃まで耐える。密生して芝生状になり、病害虫にも強い
- 管理:ほぼ放任で可。植栽密度は1㎡あたり25〜36株
- 注意点:生育は遅めで、完全に被覆するまで2〜3年かかる
玉竜は日本庭園と和の庭づくり完全ガイドでも重要な植栽材料として紹介されています。
2. ツルニチニチソウ(Vinca minor)
ヨーロッパ原産の常緑蔓性植物で、広範囲を素早く覆う能力に優れています。
- 耐陰性:半日陰〜完全な日陰
- 草丈:10〜15cm
- 特徴:春に青紫色の可愛らしい花を咲かせる。乾燥に強く、斜面緑化にも適する
- 管理:年1回の刈り込みで形を整える程度
- 注意点:繁殖力が強いため、広がりすぎないよう境界を設定
3. アジュガ(Ajuga reptans)
別名「ジュウニヒトエ」。日陰で美しい花を咲かせる数少ないグランドカバーです。
- 耐陰性:半日陰〜明るい日陰
- 草丈:10〜20cm
- 特徴:春に青紫色の花穂を多数立ち上げ、見事な景観を作る。銅葉品種や斑入り品種もあり、葉の観賞価値も高い
- 管理:花後の花茎切りが推奨されるが、必須ではない
- 注意点:夏の蒸れに弱いため、風通しの良い場所が望ましい
踏圧耐性グループ
4. コケ類(モス/Moss)
「芝生を愛する」植物が存在しないなら、コケは「日陰を愛する」植物と言えます。
- 耐陰性:半日陰〜完全な日陰(品種により異なる)
- 草丈:1〜5cm
- 特徴:湿った酸性土壌(pH4.5〜6.0)で最もよく育つ。シート状のコケ(シートモス)は低〜中程度の踏圧に耐え、無刈り込み代替品として人気上昇中(Lawn Love)
- 管理:雑草の手取り除草以外、ほぼ管理不要
- 注意点:確立まで十分な水分が必要。乾燥すると休眠状態になる
コケの栽培技術についてはガーデニング入門・基礎知識の完全ガイドでも基本から解説しています。
5. クラピア(Kurapia / Phyla nodiflora hybrids)
日本で開発された改良品種で、芝生に最も近い使用感を持つグランドカバーです。
- 耐陰性:半日陰(1日4時間以上の日照が理想)
- 草丈:3〜5cm
- 特徴:踏圧に非常に強く、踏めば踏むほど密になる特性がある。芝生の10倍の速度で広がり、1年で地面を覆う(日陰のグランドカバー)
- 管理:年2〜3回の刈り込みで美観を保つ
- 注意点:完全な日陰では徒長しやすい。半日陰が限界
6. クリーピングタイム(Thymus serpyllum)
ハーブのタイムの匍匐性品種で、「歩ける香りの絨毯」として人気です。
- 耐陰性:明るい日陰(半日陰まで)
- 草丈:3〜8cm
- 特徴:踏むと爽やかな香りを放つ。初夏に小さなピンク色の花を密生させる
- 管理:ほぼ放任で可。過湿を嫌うため排水の良い場所が理想
- 注意点:完全な日陰では花付きが悪くなる
高い観賞価値グループ
7. ギボウシ(Hosta)
世界的に人気の高い日陰植物で、葉の美しさが際立ちます。
- 耐陰性:半日陰〜完全な日陰
- 草丈:15〜80cm(品種により大きく異なる)
- 特徴:葉色・サイズ・模様のバリエーションが豊富。小型品種(10〜20cm)はグランドカバーに最適。夏に芳香のある白や紫の花を咲かせる
- 管理:病害虫に強く、ほぼ放任栽培可能。ナメクジ対策が必要な場合あり
- 注意点:冬季は地上部が枯れる(宿根性)
8. ヒューケラ(Heuchera)
カラーリーフプランツの代表格で、日陰の庭に彩りを添える植物です。
- 耐陰性:半日陰〜明るい日陰
- 草丈:20〜40cm
- 特徴:銅色、紫、ライム、シルバーなど葉色が豊富。耐寒性が高く(-20℃まで)、常緑〜半常緑性
- 管理:春に古い葉を取り除く程度
- 注意点:強い日陰では葉色が淡くなる傾向
9. エピメディウム(イカリソウ/Epimedium)
日陰の林床を自然に演出する優雅な多年草です。
- 耐陰性:半日陰〜完全な日陰に優れる
- 草丈:20〜30cm
- 特徴:春に独特の形をした小花を咲かせる。研究では「半日陰から強い日陰に優れたグランドカバー」として評価が高い(Iowa State University)
- 管理:ほぼ放任で可。生育はゆっくりだが、一度確立すると非常に安定
- 注意点:乾燥を嫌うため、腐葉土を多めに施す
ハーブ系グループ
10. ローマンカモミール(Chamaemelum nobile)
「香る芝生」として古くから親しまれているハーブです。
- 耐陰性:明るい日陰〜半日陰
- 草丈:10〜15cm
- 特徴:葉と花にリンゴのような甘い香り。踏圧にある程度耐え、踏むと香りが立つ(グランドカバー植物)
- 管理:年2〜3回の刈り込みで芝生状を維持
- 注意点:完全な日陰では花が咲きにくい
11. ペニーロイヤルミント(Mentha pulegium)
ミントの仲間で、匍匐性と踏圧耐性を併せ持つ珍しいハーブです。
- 耐陰性:半日陰でも良好に生育
- 草丈:5〜15cm
- 特徴:常緑で繁殖力旺盛。踏圧に強く芝生代わりに使用可能
- 管理:広がりすぎないよう、境界を設定するか定期的に刈り込む
- 注意点:ミント特有の強い繁殖力に注意
12. ディコンドラ(Dichondra repens)
芝生に最も近い見た目を持つ、丸い葉が愛らしいグランドカバーです。
- 耐陰性:半日陰〜明るい日陰
- 草丈:2〜5cm
- 特徴:密集して地面を覆い、柔らかな印象を与える。乾燥に強い(芝生の代わり植物)
- 管理:刈り込み不要だが、定期的に刈ると美観が向上
- 注意点:寒冷地では冬季に褐変する場合あり
これらの植物はガーデニングツール・資材の完全ガイドで紹介する適切な道具を使って植栽・管理することで、より良い結果が得られます。
日陰グランドカバーの植栽方法:ステップバイステップ
科学的根拠に基づいた、成功率の高い植栽手順を解説します。

ステップ1:土壌の準備(最重要)
日陰の土壌は往々にして硬く締まり、栄養も不足しがちです。以下の手順で土壌を改良します:
- 土壌pH測定:簡易測定キットで現在のpHを確認(目標pH5.5〜6.5)
- 耕起:深さ20〜30cmまで耕し、土壌を柔らかくする
- 有機物の混入:堆肥や腐葉土を土壌の30〜40%の体積で混ぜ込む。これにより保水性と排水性が同時に向上(土づくりの基礎)
- 緩効性肥料の施用:植栽前に緩効性の化成肥料(NPK 10-10-10等)を50g/㎡施す
詳しい土壌改良方法は土づくり・堆肥・肥料の基礎知識と実践ガイドをご覧ください。
ステップ2:植栽密度の設計
植物の生育速度に応じて適切な植栽密度を設定します:
| 植物タイプ | 推奨植栽密度(株/㎡) | 完全被覆までの期間 |
|---|---|---|
| 玉竜、コケ類 | 25〜36株 | 2〜3年 |
| クラピア、アジュガ | 9〜16株 | 1〜2年 |
| ギボウシ(小型) | 9〜12株 | 2〜3年 |
| ツルニチニチソウ | 4〜9株 | 1〜2年 |
注意:密植すれば早く地面を覆えますが、コストが上がります。予算と急ぎ度合いで調整しましょう。
ステップ3:植え付け作業
- 植穴の掘削:ポット苗の1.5〜2倍の大きさの穴を掘る
- 根鉢のほぐし:根がポットの形に固まっている場合、軽くほぐして外側の根を広げる
- 植え付け深さ:苗の根鉢上面が地表面と同じかわずかに高い程度に植える。深植えは厳禁
- 覆土と鎮圧:周囲の改良土で覆い、軽く押さえて根と土を密着させる
- たっぷり灌水:植え付け直後にたっぷりと水を与え、根と土の隙間をなくす
ステップ4:マルチングの実施
植栽後、2〜5cmの厚さでマルチングを行います。マルチ材には以下が適しています:
マルチングは、雑草の発芽抑制、土壌水分の保持、土壌温度の安定化という3つの重要な効果をもたらします(造園の基本)。
造園・ガーデンデザインの基本と実践ガイドでは、マルチングを含む庭づくりの基本技術を詳しく解説しています。
ステップ5:確立期の管理(最初の1年が重要)
植栽後1年間は、根の確立期間として丁寧な管理が必要です:
- 灌水:土壌表面が乾いたら、週に2〜3回たっぷりと水やり。根が深く張るよう、頻度より1回の量を重視
- 雑草管理:グランドカバーが地面を覆うまでは、雑草を手で抜く。除草剤は植物にダメージを与える可能性があるため避ける
- 追肥:植栽2ヶ月後から、月1回程度の液肥施用(規定の半分の濃度で)
- 病害虫観察:日陰では病害が出やすいため、葉の変色や萎れに注意し、早期発見・早期対処を心がける
水やり・灌漑システムの完全ガイドでは、効率的な水やり方法を詳しく解説しています。
よくある失敗例と対策
失敗例1:選択ミス - 日陰の度合いと植物の不一致
症状:植物が徒長し、葉色が薄く、密度が上がらない

原因:半日陰向けの植物を完全な日陰に植えた、または逆のケース
対策:庭の日照を正確に測定(スマホアプリ「Sun Seeker」等が便利)し、それに応じた植物を選ぶ。失敗した場合は早めに植え替えを検討
失敗例2:土壌準備不足
症状:植え付け後の生育が極端に遅い、または枯れる
原因:硬い土壌、排水不良、栄養不足
対策:土壌改良を徹底する。特に日陰では水はけが悪くなりがちなため、腐葉土や堆肥で土壌構造を改善することが不可欠
失敗例3:過度な期待 - 芝生と同等の機能を求める
症状:踏圧で植物が傷み、見た目が悪化
原因:踏圧耐性の低い植物を頻繁に歩く場所に植えた
対策:研究でも指摘されているように、多くのグランドカバーは頻繁な踏圧に耐えられない(Gardening Know How)。歩行動線には飛び石やレンガの小道を設置する設計に変更
失敗例4:単一種のみの植栽
症状:病害虫が発生した際、一気に全滅
原因:多様性の欠如により、リスクが分散されていない
対策:複数種を組み合わせて植栽する「混植」を採用。見た目にも変化が生まれ、生態系的にも安定する
まとめ:日陰を活かした美しい庭づくりへ
日陰で芝生が育たないという事実は、決して庭づくりの障害ではありません。むしろ、芝生では表現できない豊かで多様な植栽デザインへの入り口と捉えることができます。
本記事で紹介した科学的根拠に基づいた知識と実践的な方法を活用すれば:
- 低メンテナンスで持続可能な緑地が実現できる
- 多様な植物の組み合わせにより、四季折々の変化を楽しめる
- 生態系に優しい庭として、野鳥や昆虫の訪れる空間になる
- 芝生以上の美的価値を持つ個性的な庭が完成する
国内外の77種類以上の日陰耐性グランドカバーが研究で確認されており、あなたの庭の条件に合った最適な植物が必ず見つかります(West Lake研究)。
日陰という条件を制約と見るのではなく、新しい庭の可能性を開く機会として、ぜひグランドカバーを使った庭づくりに挑戦してみてください。ガーデニング入門・基礎知識の完全ガイドや造園・ガーデンデザインの基本と実践ガイドと併せて読むことで、より実践的な庭づくりの知識が身につきます。





