松の剪定:みどり摘み・もみあげの手順
2026年2月6日

松の剪定に欠かせないみどり摘み(キャンドリング)ともみあげの手順を初心者向けに詳しく解説します。作業時期・道具選び・種類別のポイント・よくある失敗と対策まで、わかりやすくまとめた松の剪定完全ガイドです。
松の剪定:みどり摘み・もみあげの手順
松は日本庭園を代表する樹木であり、美しい樹形を維持するためには年間を通じた適切な剪定が欠かせません。職人の間では「松の剪定ができれば一人前」といわれるほど、庭木の中でも特に技術が求められる樹種です。しかし、基本的な手順とコツを理解すれば、初心者でも自宅の松を美しく管理することは十分に可能です。
この記事では、松の剪定に欠かせない2大技法であるみどり摘みともみあげの手順を中心に、作業時期・道具選び・注意点まで詳しく解説します。正しい剪定を行うことで、松の健康を保ちながら風格のある美しい樹形を長年にわたって楽しむことができます。
松の剪定が年2回必要な理由
松は他の庭木と異なり、独特の成長サイクルを持っています。春には新芽(ミドリ)が勢いよく伸び、秋には古い葉が自然に茶色くなって落ちます。この成長サイクルに合わせて、春のみどり摘み(4〜5月)と秋冬のもみあげ(11〜12月)という2回の剪定を行うのが基本です。
年に1回しか手入れできない場合は、晩秋のもみあげだけでも行うのがおすすめです。春から初秋にかけては新芽の成長や葉の変化が激しいため、剪定時の姿を長く維持できません。一方、晩秋に行えば翌春まで美しい姿を保てます。
松の剪定を怠ると、枝が密集して内部に日光が届かなくなり、下枝が枯れて樹形が崩れる原因となります。また、風通しが悪くなると病害虫が発生しやすくなるため、定期的な剪定は松の健康維持に直結しています。
みどり摘みの時期と基本手順
みどり摘みとは
みどり摘みとは、春に松の枝先から伸びてくる新芽(ミドリ)をかき取る作業のことです。英語圏では「キャンドリング(candling)」と呼ばれ、日本庭園の技法として世界的にも知られています。新芽がロウソクの炎のように立ち上がることから、この名前がつきました。

作業時期
みどり摘みの最適な時期は4月下旬〜5月中旬です。新芽がまだ柔らかいうちに手で摘み取れるタイミングを見極めることが重要です。時期が遅くなるほど新芽が固くなり、摘み取りが困難になるため早めの作業を心がけましょう。
みどり摘みの手順
- 観察:枝先に数本のミドリが立ち上がっているのを確認する
- 選別:伸びの強い長いミドリと、短いミドリを見分ける
- 摘み取り:長いミドリを根元から折り取り、短いミドリを1本の枝に2本程度残す
- 方向の調整:残すミドリは、伸ばしたい方向に向いているものを選ぶ
- 全体の確認:樹冠全体のバランスを見ながら、上部は強めに、下部は弱めに摘む
上部の枝は勢いが強いため多めに摘み、下部の枝は弱いため控えめにすることで、全体のバランスが整います。この強弱のコントロールがプロの剪定テクニックの基本です。
もみあげの時期と基本手順
もみあげとは
もみあげとは、松の古い葉(前年以前の葉)を手で「もむように」しごき取る作業です。これにより内部まで日光と風が届くようになり、松の健康と美しい樹形を維持できます。もみあげは松特有の剪定方法であり、他の樹種では行いません。

作業時期
もみあげの最適な時期は11月〜12月です。松の成長が落ち着いた休眠期に行うことで、木へのダメージを最小限に抑えられます。夏に行うと暑さによるストレスと重なり、松が弱る原因となるので避けてください。
もみあげの手順
- 透かし剪定:まず、枯れ枝・絡み枝・不要な枝をハサミで切り落とす
- 古葉の確認:今年伸びた新しい緑色の葉と、茶色くなった古葉を見分ける
- 古葉の除去:古い葉を手でもんでしごき取る(ハサミは使わない)
- 新葉の調整:必要に応じて今年の葉も先端を残して間引く
- 仕上げ:各枝の先端にバランスよく葉が残っているか確認する
重要なポイント:もみあげでは必ず手作業で行います。ハサミを使うと葉の根元部分が残って見栄えが悪くなるため、必ず手袋を着用して手でしごき取りましょう。
松の種類別の剪定ポイント
松にはさまざまな種類があり、それぞれ剪定の注意点が異なります。ご自宅の松の種類を確認し、適切な方法で手入れを行いましょう。
| 松の種類 | みどり摘みの強さ | もみあげの程度 | 特徴と注意点 |
|---|---|---|---|
| クロマツ(黒松) | やや強め | しっかり行う | 成長が旺盛で樹形が乱れやすい。力強い枝ぶりが魅力 |
| アカマツ(赤松) | 控えめ | やや控えめ | クロマツより繊細。強い剪定で弱りやすいので注意 |
| 五葉松 | 控えめ | 軽めに行う | 葉が短く密で繊細。芽摘みともみあげは慎重に |
| 錦松 | やや強め | しっかり行う | 幹の樹皮が特徴的。クロマツに準じた管理が可能 |
| リュウキュウマツ | 控えめ | 軽めに行う | 暖地向け。寒さに弱いので冬の強い剪定は避ける |
特に五葉松は成長が遅く、強い剪定をすると回復に時間がかかります。剪定の基本知識を押さえた上で、品種に合った強さで作業することが大切です。
松の剪定に必要な道具と準備
松の剪定には専用の道具と事前準備が欠かせません。特に松脂(マツヤニ)対策は重要です。
必要な道具
- 剪定バサミ:透かし剪定用。切れ味の良いものを選ぶ(剪定バサミの手入れ方法も参照)
- 植木バサミ:細かい枝の処理用
- 剪定ノコギリ:太い枝を切る場合に使用
- 革手袋:もみあげ作業での葉の刺さりを防止
- 脚立:高所作業用(安定したものを選ぶ)
- ブルーシート:落とした枝や葉の回収用
服装の注意点
松の木の剪定では必ず松脂が衣類に付着します。松脂は洗濯しても簡単には落ちないため、捨ててもよい服を着用しましょう。また、切った枝や葉が降りかかってくるので帽子の着用も必須です。長袖・長ズボンで作業し、動きやすい靴を履いてください。
効率的な作業の進め方とコツ
松の剪定を効率的に進めるためには、正しい順序と手の動かし方を知っておくことが重要です。
作業の順序
松の剪定は頂点から下へ、奥から手前へ進めるのが鉄則です。上から作業することで、切った枝や葉が下の作業済みの部分に落ちて汚れるのを防げます。また、脚立の移動回数も最小限に抑えられます。
もみあげ作業のコツ
もみあげ作業では、枝の上から手を入れると葉が手に刺さります。枝の下から手を差し込むようにすると、葉先が手に刺さりにくく作業がスムーズに進みます。この小さなコツを知っているかどうかで、作業のストレスと効率が大きく変わります。
樹形を考えた剪定のポイント
- 逆三角形を意識:松の理想的な樹形は、下の枝ほど長く広がる逆三角形です
- 枝の段を作る:各段の枝が日光を受けられるよう、上の枝は短めに仕立てます
- 芯(頂芽)の管理:樹高を抑えたい場合は、頂芽を摘んで脇芽に切り替えます
樹形の種類と仕立て方を参考に、目標とする樹形をイメージしてから作業に取りかかりましょう。
松の剪定でよくある失敗と対策
初心者が陥りやすい失敗とその対策を知っておくことで、大切な松を傷めるリスクを減らせます。

失敗1:葉のない部分まで切り詰める
松は古い木の部分からは新芽が出ません。葉のない部分まで切り詰めてしまうと、その枝は永久に裸のままになってしまいます。必ず葉のある位置より先で剪定することが鉄則です。
失敗2:みどり摘みの時期が遅すぎる
6月以降にみどり摘みをしようとしても、新芽が固くなって手で摘めなくなります。無理にハサミで切ると切り口が目立ち、不自然な仕上がりになります。4〜5月の適期を逃さないようカレンダーに記録しておきましょう。樹種別の剪定カレンダーも活用してください。
失敗3:もみあげで新しい葉まで取りすぎる
今年の葉を取りすぎると光合成が不十分になり、松が弱ってしまいます。必ず枝先に十分な新葉を残すようにしましょう。古葉と新葉の見分けがつかない場合は、葉の色(古葉は黄緑〜茶色、新葉は鮮やかな緑)で判断できます。
失敗4:松脂対策をしていない
松脂が刃物に付着すると切れ味が落ち、きれいな切り口が作れなくなります。作業中はこまめに刃を拭き、作業後にはアルコールや灯油で松脂を落としましょう。剪定道具の正しい手入れを怠ると、次回の作業効率にも影響します。
松の剪定を業者に依頼する場合の費用目安
松の剪定は技術的に難しいため、特に大きな松や仕立て物の松は専門業者への依頼も検討しましょう。
| 松の高さ | 剪定費用の目安(1本あたり) | 作業時間の目安 |
|---|---|---|
| 3m未満(低木) | 5,000〜10,000円 | 1〜2時間 |
| 3〜5m(中木) | 10,000〜25,000円 | 2〜4時間 |
| 5〜7m(高木) | 25,000〜40,000円 | 半日〜1日 |
| 7m以上(大木) | 40,000円〜 | 1日以上 |
※ 費用は地域や業者により異なります。仕立て物(段づくりなど)の場合は追加料金がかかることがあります。
業者を選ぶ際は、松の剪定実績が豊富な造園業者を選びましょう。一般的な庭木の剪定と松の剪定では求められる技術レベルが異なるため、松の取り扱い経験を事前に確認することが大切です。
まとめ:年間を通じた松の手入れスケジュール
松の美しい樹形を保つためには、年間を通じた計画的な手入れが欠かせません。以下のスケジュールを参考に、適切なタイミングで作業を行いましょう。
松の剪定は一朝一夕に上達するものではありませんが、毎年繰り返し実践することで確実に技術が向上します。まずはご自宅の松で基本の手順を試し、少しずつ理想の樹形に近づけていきましょう。剪定・整枝の技術ガイドも併せてご覧ください。





