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剪定・整枝の技術完全ガイド

樹形の種類と目的に合った仕立て方

2026年2月6日

樹形の種類と目的に合った仕立て方

樹形の種類と目的に合った仕立て方を徹底解説します。主幹形・開心自然形・エスパリエ・玉仕立てなど代表的な樹形の特徴と、果樹・庭木それぞれに最適な仕立て方、剪定・誘引のテクニックまで初心者にもわかりやすく紹介。庭づくりや果樹栽培に役立つ実践的な樹形ガイドです。

樹形の種類と目的に合った仕立て方

庭木や果樹を美しく健康に育てるためには、樹形を理解し、目的に合った仕立て方を選ぶことが欠かせません。樹形とは樹木全体の形のことで、自然のままに育つ形から人為的に整える形まで多くの種類があります。正しい樹形を選ぶことで、日当たりや風通しが改善され、花つきや果実の収穫量にも大きな違いが生まれます。

この記事では、代表的な樹形の種類とその特徴を詳しく解説し、庭木・果樹それぞれの目的に合った仕立て方を紹介します。初心者の方でも実践できるよう、剪定の基本知識と合わせてご活用ください。

樹形とは?基本的な考え方

樹形とは、幹・主枝・側枝・葉がつくり出す樹木全体のシルエットのことです。樹形は大きく分けて「自然樹形」と「人工樹形(仕立てもの)」の2つに分類されます。

樹形とは?基本的な考え方 - illustration for 樹形の種類と目的に合った仕立て方
樹形とは?基本的な考え方 - illustration for 樹形の種類と目的に合った仕立て方

自然樹形は、樹木が本来持つ成長パターンに任せた形です。最低限の剪定で樹木の個性を活かすため、自然な美しさが楽しめます。エゴノキやシャラなどは自然樹形が特に美しい樹種として知られています。

人工樹形(仕立てもの)は、剪定や誘引によって人為的に形を整えたものです。果樹の収穫量を最大化したり、限られたスペースに合わせて育てたりする目的で用いられます。トピアリーのように装飾的な目的で行われることもあります。

樹形を選ぶ際に重要なのは、以下の3つのポイントです。

  • 目的観賞用か収穫用か、生垣か独立樹か
  • スペース:植栽場所の広さと高さの制限
  • 樹種の特性:成長速度、枝の伸び方、樹勢の強さ

主な樹形の種類一覧と特徴

樹形にはさまざまな種類があります。以下の表で代表的な樹形をまとめました。

樹形の種類特徴適した樹種の例難易度
主幹形(中心幹型)1本の主幹を中心にピラミッド型に成長リンゴ、ナシ、モミジ★★☆
開心自然形(杯状型)中心を開いて日光を取り込む花瓶型モモ、ウメ、アンズ★★☆
変則主幹形主幹形の高さを抑えたバランス型カキ、サクランボ★★★
一文字仕立て横一線に枝を広げる省スペース型イチジク、ブドウ★★★
棚仕立て棚に枝を誘引して広げる方法ブドウ、キウイ★★☆
エスパリエ壁面やトレリスに二次元的に育てるリンゴ、ナシ★★★
玉仕立て球形に刈り込んで整える装飾的な形ツゲ、キャラボク★★☆
株立ち根元から複数の幹が立ち上がる自然形シマトネリコ、ヒメシャラ★☆☆

参考:やくも果樹研究所 - 果樹栽培のススメ【仕立て方編】

果樹に適した樹形と仕立て方

果樹の仕立て方を正しく選ぶことは、収穫量と品質に直結します。それぞれの仕立て方の詳細を見ていきましょう。

果樹に適した樹形と仕立て方 - illustration for 樹形の種類と目的に合った仕立て方
果樹に適した樹形と仕立て方 - illustration for 樹形の種類と目的に合った仕立て方

主幹形(Central Leader)

主幹形は、1本の中心となる幹(主幹)を伸ばし、そこから段階的に側枝を配置するピラミッド型の樹形です。クリスマスツリーのような形をイメージするとわかりやすいでしょう。

主幹形の特徴は、樹木が強く安定した構造を持ち、上部まで均等に光が当たることです。特にリンゴやナシ(ヨーロッパ系)に適しており、自然とこの形に育ちやすい傾向があります。果樹の剪定と整枝において、主幹形は基本的な仕立て方の一つです。

参考:Grow Organic - Training Shapes for Fruit Trees

開心自然形(Open Center / Vase型)

開心自然形は、中心の主幹を途中で切り、3〜4本の主枝を外側に広げて花瓶のような形にする樹形です。中心部が開いているため、内部まで十分な日光と風通しが確保されます。

核果類(モモ、ウメ、アンズ、スモモ)に特に適しています。これらの樹種は横に広がりやすい性質があるため、開心自然形に仕立てやすく、果実への日照も確保しやすくなります。

参考:Raintree Nursery - Pruning Strategies for Fruit Trees

一文字仕立てとY字仕立て

一文字仕立ては、主枝を水平に左右へ一直線に伸ばす仕立て方です。イチジクでよく採用され、樹形のイメージがしやすく作業性に優れ、省スペースで栽培できるのが大きなメリットです。

ただし注意点として、強樹勢品種には向きません。弱〜中樹勢の品種で行うのがおすすめです。Y字仕立ても同様に省スペース型ですが、一文字仕立てよりも角度をつけるため、やや広い面積が必要になります。

参考:みんなの農業広場 - 果樹のジョイント仕立てについて

エスパリエ仕立て

エスパリエは、壁面やトレリスに沿って樹木を二次元的に仕立てるヨーロッパ発祥の技法です。限られたスペースでも果樹を栽培でき、ベランダガーデニングにも応用できます。

リンゴやナシに最も適しており、モモやサクランボなどの核果類は強剪定に弱いためあまり向きません。RHS(英国王立園芸協会)では、エスパリエの詳しい誘引方法が紹介されています。

庭木の樹形と仕立て方

庭木の場合、果樹とは異なり美観と景観づくりが主な目的となります。

庭木の樹形と仕立て方 - illustration for 樹形の種類と目的に合った仕立て方
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自然樹形を活かす

多くの庭木は、自然樹形を活かすのが最も美しく手入れも楽です。シャラやエゴノキなど自然に樹形が整う樹種は、透かし剪定で不要な枝を取り除くだけで十分です。

自然樹形で管理する場合のポイントは、忌み枝を定期的に除去することです。忌み枝とは、枯れ枝・内向き枝・重なり枝・下がり枝・ひこばえなど、樹形を乱す不要な枝のことです。

参考:庭木の剪定方法の基本 - ミツモア

玉仕立て・玉チラシ

玉仕立ては、枝先を球形に刈り込んで整える装飾的な樹形です。ツゲやキャラボクなどの常緑樹でよく行われ、生垣の刈り込みと同様の技術が必要です。

玉チラシは、一本の木の中に複数の球形を作り出す高度な仕立て方で、日本庭園の代表的な技法です。マキやモッコク、キャラボクなどで行われます。

参考:沼山造園 - 仕立て方5選と代表的な樹木の紹介

株立ちと単幹

庭木を選ぶ際には、株立ち単幹かの選択も重要です。

  • 株立ち:根元から複数の幹が立ち上がる形。やわらかく自然な印象で、シマトネリコやヒメシャラに多い
  • 単幹:1本の幹がまっすぐ立ち上がる形。力強い印象で、ハナミズキやシラカシに多い

植栽場所の広さや求める雰囲気に合わせて選びましょう。

目的別おすすめの樹形

樹形選びに迷ったら、以下の目的別ガイドを参考にしてください。

目的おすすめの樹形ポイント
果実の収穫を最大化開心自然形・変則主幹形日照確保と作業性を重視
省スペースで果樹栽培エスパリエ・一文字仕立て壁面やフェンスを活用
自然な庭の雰囲気自然樹形・株立ち最低限の剪定で維持
日本庭園風の演出玉チラシ・仕立てものプロの剪定テクニックが参考になる
目隠し・防風生垣仕立て定期的な刈り込みが必要
ベランダ・鉢植えあんどん仕立て・棚仕立てコンパクトに管理できる

樹形づくりに必要な剪定と誘引の技術

理想の樹形をつくるためには、剪定誘引の2つの技術を組み合わせることが重要です。

樹形づくりに必要な剪定と誘引の技術 - illustration for 樹形の種類と目的に合った仕立て方
樹形づくりに必要な剪定と誘引の技術 - illustration for 樹形の種類と目的に合った仕立て方

剪定の基本

樹形を維持するための剪定には、大きく分けて透かし剪定(間引き剪定)切り戻し剪定があります。

  • 透かし剪定:現在の樹形を維持しながら、一部の枝を根元から完全に切り取る方法。風通しと日照を改善します
  • 切り戻し剪定:枝の途中で切り返し、樹形のサイズを調整する方法。新しい枝の成長方向をコントロールできます

全体的に透かし剪定で枝を減らし、必要な場所のみ切り戻し剪定をするのが基本的な考え方です。剪定の時期も樹種によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

参考:住友化学園芸 - 家庭果樹の剪定

誘引のメリットと方法

誘引とは、枝を紐やワイヤーで固定して、希望の方向や角度に導く技術です。特に果樹の仕立てでは欠かせない技術で、つる植物の誘引テクニックとも共通点があります。

誘引には3つの大きなメリットがあります。

  1. 樹に無理をさせない:剪定だけで樹形を整えると切りすぎになることがあるが、誘引なら枝を活かしたまま形を整えられる
  2. 花芽がつきやすくなる:枝を水平方向に誘引すると、樹の若返り(徒長枝の発生)を抑え、花芽の分化が促進される
  3. コンパクトに仕立て直せる:曲げた枝の基部から新しい枝が発生しやすくなり、樹形の更新がしやすい

参考:アルスコーポレーション - 果樹の仕立て直し

剪定の適切な時期

樹形管理のための剪定は、時期を間違えると樹木にダメージを与えてしまいます。

  • 落葉樹12月〜2月の休眠期が適期。葉が落ちて樹形全体が見えるため、形を整えやすい
  • 常緑樹:6月〜7月上旬が適期。光合成が活発で回復力が高い時期
  • 花木:花後すぐの剪定が基本。花木の剪定方法で詳しく解説

強剪定と弱剪定の違いを理解することも、樹形管理には重要です。

失敗しない樹形づくりのコツ

最後に、樹形づくりで失敗しないためのポイントをまとめます。

1. 若木のうちから仕立てる

樹形は若木の段階から計画的に整えることが重要です。太い枝を後から切ると大きな切り口が残り、切り口の処理が必要になります。

2. 一度に切りすぎない

樹形を急いで整えようとして一度に大量の枝を切ると、樹木が弱ったり徒長枝が大量発生したりします。夏の剪定の注意点も確認しておきましょう。

3. 道具を正しく手入れする

切れ味の悪い道具は切り口が荒れ、病気の原因になります。剪定バサミの手入れ方法を参考に、常に良好な状態を保ちましょう。

4. 樹種の特性を理解する

すべての樹木に同じ仕立て方が使えるわけではありません。成長速度や枝の出方、樹勢の強さを把握した上で、適切な樹形を選んでください。

まとめ

樹形の種類と仕立て方について、果樹と庭木の両面から解説しました。主幹形、開心自然形、エスパリエ、玉仕立てなど、それぞれの樹形には明確な特徴と適した用途があります。

大切なのは、育てる目的・スペース・樹種の特性に合わせて最適な樹形を選ぶことです。果樹なら収穫量を左右し、庭木なら庭全体の美しさを決める重要な要素となります。

まずは剪定の基本知識を身につけ、お持ちの樹木に合った仕立て方を選んでみてください。樹形づくりは一朝一夕にはできませんが、年々理想の形に近づいていく過程こそ、園芸の大きな楽しみです。

参考:OSU Extension Service - Training and Pruning Your Home Orchard

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