果樹の剪定と整枝:収穫量を増やす方法
2026年2月6日

果樹の剪定と整枝の違い、樹種別の剪定適期、収穫量を15%〜125%増やすV字仕立てなどの整枝テクニック、年間管理カレンダーを詳しく解説。初心者でもすぐに実践できる果樹管理の完全ガイドです。正しい道具の選び方や切り口の処理方法も紹介します。
果樹の剪定と整枝:収穫量を増やす方法
家庭で果樹を育てていると、「昨年より実が少ない」「果実が小さくなった」と感じることはありませんか?その原因の多くは、適切な剪定と整枝が行われていないことにあります。果樹の剪定と整枝は、収穫量を増やし、高品質な果実を得るための最も重要な管理作業です。
この記事では、果樹の剪定と整枝の基本的な違いから、樹種別の実践テクニック、収穫量を最大化するためのポイントまで、詳しく解説します。初心者の方でもすぐに実践できるよう、写真やイラスト付きで分かりやすくお伝えします。
剪定と整枝の違いを正しく理解しよう
果樹管理において、「剪定」と「整枝」は似ているようで目的が異なります。この違いを正しく理解することが、収穫量アップの第一歩です。
剪定(せんてい) は、不要な枝を切り落として樹形を整える作業です。枝の先端を切る「切りつめ剪定」と、混み合った枝を根本から除去する「間引き剪定」の2種類があります。主に木の健康を維持し、見た目を美しく保つことが目的です。
整枝(せいし) は、枝の配置や角度を調整して、果実の収穫量を増やすことを主目的とした作業です。枝を誘引したり、支柱で角度を変えたりすることで、果実がつく枝を増やし、一つ一つの果実に均等に栄養が行き渡るようにします。
| 項目 | 剪定 | 整枝 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 樹形を整える・健康維持 | 収穫量を増やす |
| 作業内容 | 枝を切り落とす | 枝の配置・角度を調整する |
| 効果 | 日当たり・通風の改善 | 着果促進・果実品質の向上 |
| 作業時期 | 主に冬季(休眠期) | 生育期・冬季の両方 |
| 道具 | 剪定バサミ・ノコギリ | 誘引紐・支柱・重り |
両方を組み合わせることで、果樹の健康を維持しながら最大限の収穫量を得ることができます。JAあつぎの営農通信でも、剪定と整枝の組み合わせが推奨されています。
果樹の剪定の基本テクニック
果樹の剪定を成功させるためには、基本的なテクニックを身につけることが大切です。ここでは、初心者でも実践できる剪定の基本を解説します。

間引き剪定のやり方
間引き剪定は、混み合った枝を根本から切り除く方法です。以下の枝を優先的に除去しましょう。
- 交差枝:他の枝と交差している枝
- 内向枝:樹冠の内側に向かって伸びている枝
- 下垂枝:下方向に垂れ下がっている枝
- 平行枝:他の枝と平行に近接して伸びている枝
- 徒長枝:勢いが強く真上に伸びた枝
間引き剪定を行うことで、樹冠内部まで日光が届くようになり、果実の着色や糖度が向上します。住友化学園芸のガイドによると、適切な間引きで果実品質が大幅に改善されます。
切りつめ剪定のポイント
切りつめ剪定は、枝の先端を途中で切る方法です。新しい枝の発生を促し、果実をつける短果枝の形成を促進します。
切る位置は、芽の5〜10mm上が理想的です。芽の方向を確認し、外向きの芽の上で切ることで、樹冠を外に広げる方向に成長させることができます。
太い枝の正しい切り方
太い枝を剪定する際は、正しい手順を守ることが重要です。力任せに切ると、枝が裂けて樹皮を大きく傷つけてしまいます。
- まず、枝の下側に3分の1程度の深さの切り込みを入れる
- 次に、少し外側の上側から切り落とす
- 最後に、残った枝の根本を幹に沿って切り取る
- 切り口に癒合剤を塗って雑菌の侵入を防ぐ
この「アンダーカット法」により、枝の重みで樹皮が裂けるのを防ぎ、切り口がきれいに仕上がります。セゾンのくらし大研究でも、この方法が推奨されています。
樹種別の剪定適期と方法
果樹の種類によって、最適な剪定時期や方法は異なります。以下の表を参考に、それぞれの果樹に合った剪定を行いましょう。
| 果樹 | 剪定適期 | 剪定の特徴 |
|---|---|---|
| りんご | 12月〜2月 | 主幹形・開心形に仕立て、短果枝を残す |
| 桃 | 12月〜2月 | 強剪定が可能、長果枝に実をつける |
| ぶどう | 1月〜2月 | 前年枝を2〜3芽で切り、棚仕立てで管理 |
| みかん | 3月〜4月 | 弱剪定が基本、内部の枯れ枝を除去 |
| 柿 | 12月〜2月 | 開心自然形で、結果母枝の更新を重視 |
| ブルーベリー | 12月〜2月 | 古い枝を株元から更新、花芽を調整 |
| いちじく | 12月〜1月 | 一文字仕立て、前年枝を2〜3芽で切る |
| レモン | 3月〜4月 | 弱剪定、内部の混み合いを解消 |
多くの落葉果樹は休眠期の12月〜2月が剪定適期ですが、柑橘類は春先の3月〜4月が適期です。前年の収穫量や樹の状態を踏まえて剪定の強さを調整しましょう。
収穫量を増やす整枝のテクニック
整枝は果樹の収穫量を劇的に増やすことができる重要な技術です。ここでは、実践的な整枝テクニックを紹介します。

枝の角度調整で着果を促進
果樹の枝は、角度によって果実のつきやすさが変わります。一般的に、枝が水平に近いほど果実がつきやすくなります。これは、枝の角度が変わることで植物ホルモン(オーキシンとサイトカイニン)のバランスが変化し、花芽形成が促進されるためです。
ワシントン州立大学の研究によると、枝を広角に誘引することで以下の効果が得られます。
- 光の透過が改善される
- 構造的に強い分岐部が形成される
- 栄養成長よりも果実生産が促進される
具体的な方法として、以下の誘引テクニックがあります。
- 重り法:枝先に小さな重りを吊るして角度を下げる
- 紐引き法:枝を紐で引いて地面のピンに固定する
- 棒開き法:割り箸や専用スプレッダーで枝の角度を広げる
- スコアリング:枝の基部に浅い切り込みを入れて角度を変える
主要な整枝法の比較
家庭果樹でよく使われる整枝法を比較してみましょう。
| 整枝法 | 特徴 | 適する果樹 | 収穫量 |
|---|---|---|---|
| 開心自然形 | 主枝を3〜4本開くように配置 | 桃・柿・梅 | ★★★★ |
| 主幹形 | 中心の主幹を伸ばし側枝を配置 | りんご・梨 | ★★★★ |
| 棚仕立て | 棚を使って枝を水平に誘引 | ぶどう・キウイ | ★★★★★ |
| エスパリエ | 壁面に沿って平面的に仕立て | りんご・梨・いちじく | ★★★ |
| V字仕立て | 2本の主枝をV字に配置 | 桃・りんご | ★★★★★ |
特に注目すべきはV字仕立てです。ユタ州立大学の研究によると、Perpendicular V Systemは従来の開心自然形と比較して、植え付け後2〜6年目で15%〜125%の収穫量増加が報告されています。
新梢管理の重要性
生育期における新梢管理も、収穫量に大きく影響します。GardenStoryによると、適切な新梢管理を行わないと収穫量が減少することがあります。
具体的な新梢管理作業は以下の通りです。
- 摘心(ピンチ):新梢の先端を摘んで、枝の伸びを止める
- 芽かき:不要な芽を早期に除去して、養分の分散を防ぐ
- 徒長枝の除去:勢いの強い直立枝を基部から切り取る
- 夏季剪定:樹冠内部に日光が届くよう、混み合った枝を間引く
これらの作業を5月〜7月にかけて行うことで、果実の肥大と品質向上に必要な光合成を最大化できます。
剪定・整枝に必要な道具と使い方
効率的で正確な剪定・整枝を行うためには、適切な道具を揃えることが大切です。ここでは、必要な道具の選び方を解説します。
基本の剪定道具
| 道具 | 用途 | 価格帯 |
|---|---|---|
| 剪定バサミ | 直径2cm以下の枝 | 1,500〜5,000円 |
| ロッパー(太枝切りバサミ) | 直径2〜4cmの枝 | 3,000〜8,000円 |
| 剪定ノコギリ | 直径4cm以上の枝 | 2,000〜6,000円 |
| 高枝切りバサミ | 高所の枝 | 3,000〜15,000円 |
| 癒合剤 | 切り口の保護 | 500〜1,500円 |
| 誘引紐 | 整枝作業 | 300〜800円 |
道具の手入れと注意点
剪定道具は定期的な手入れが不可欠です。刃物の正しいメンテナンスを行うことで、切れ味を維持し、樹木への負担を最小限に抑えられます。
- 使用後は必ず消毒:アルコールや次亜塩素酸ナトリウムで刃を拭く
- 定期的に研ぐ:砥石やダイヤモンドシャープナーで刃を研ぐ
- 防錆対策:使用後は刃に椿油などを塗布する
- 安全装備の着用:厚手の手袋、長袖・長ズボン、保護メガネを装着する
特に病気にかかった枝を剪定した後は、必ず刃を消毒してから他の枝を切りましょう。病原菌が刃を介して他の部分に感染する可能性があります。
剪定後のケアと年間管理スケジュール
剪定・整枝の効果を最大化するためには、作業後のケアと年間を通じた計画的な管理が重要です。

剪定後に行うべきケア
剪定直後は、樹木が最もダメージを受けやすい状態です。以下のケアを必ず行いましょう。
年間の果樹管理カレンダー
| 月 | 主な作業 | ポイント |
|---|---|---|
| 1月 | 冬季剪定(落葉果樹) | 樹形の骨格を作る |
| 2月 | 冬季剪定の仕上げ | 花芽と葉芽を見分けて調整 |
| 3月 | 柑橘類の剪定・施肥 | 芽吹き前に完了させる |
| 4月 | 摘蕾・整枝作業開始 | 花が多すぎる場合は摘蕾 |
| 5月 | 摘果・新梢管理 | 果実の間引きと徒長枝の除去 |
| 6月 | 夏季剪定・袋かけ | 樹冠内部への日照確保 |
| 7月 | 新梢管理・摘心 | 枝の伸びを調整 |
| 8月 | 収穫準備・水やり管理 | 果実の仕上がりを観察 |
| 9月 | 秋果の収穫・お礼肥 | 来年に向けた栄養補給 |
| 10月 | 秋季の整枝確認 | 来季の樹形計画を立てる |
| 11月 | 落葉後の観察 | 樹形の問題点を把握 |
| 12月 | 冬季剪定開始 | 休眠期に入ったら作業開始 |
よくある失敗と対策
果樹の剪定・整枝でよくある失敗を知っておくことで、同じミスを避けることができます。セーフリーの果樹剪定ガイドも参考にしてください。

失敗1:剪定しすぎる(強剪定のしすぎ)
枝を切りすぎると、樹木は失った枝葉を補おうとして大量の徒長枝を発生させます。結果として、果実がつきにくくなり、逆に収穫量が減少します。
対策:1年に除去する枝の量は、全体の3分の1以下に抑えましょう。強剪定と弱剪定の使い分けを理解することが重要です。
失敗2:剪定時期を間違える
活動期に強い剪定を行うと、樹液が大量に流出して樹勢が弱まります。また、花芽形成後に花芽のついた枝を切ってしまうと、翌年の収穫がなくなります。
対策:樹種ごとの適期を確認し、冬季剪定と夏季剪定を使い分けましょう。
失敗3:切り口の処理を怠る
gardening-designs.comによると、剪定後の切り口は雑菌の侵入口になりやすく、腐朽病や胴枯れ病の原因となります。
対策:直径2cm以上の切り口には必ず癒合剤を塗布し、切り口が乾くまで雨に当てないようにしましょう。
失敗4:整枝を行わない
剪定だけを行って整枝を行わないと、枝が立ち上がったままで着果が悪くなります。
対策:若木のうちから枝の角度調整を行い、水平〜やや下向きの枝を多く作ることで、着果を促進しましょう。
まとめ:剪定と整枝で果樹の収穫量を最大化しよう
果樹の剪定と整枝は、収穫量を増やすために欠かせない重要な管理作業です。この記事のポイントをまとめると以下の通りです。
- 剪定と整枝は目的が異なる:剪定は樹形の維持、整枝は収穫量の向上が主目的
- 間引き剪定と切りつめ剪定を使い分けて、効率的に樹形を管理する
- 枝の角度調整で着果を促進し、15%〜125%の収穫量増加を目指す
- 樹種ごとの適期を守り、冬季剪定と夏季剪定を計画的に行う
- 新梢管理を生育期に行い、樹冠内部への日照を確保する
- 切り口の処理と剪定後のケアを怠らない
- 年間管理カレンダーに沿って計画的に作業を進める
果樹の剪定と整枝は、一度覚えれば毎年の作業が楽しくなります。最初は難しく感じるかもしれませんが、基本を押さえて少しずつ実践することで、確実に収穫量が増えていきます。ぜひ今年の冬から、愛する果樹の剪定と整枝に挑戦してみてください。
さらに詳しい剪定の基本については「剪定・整枝の技術完全ガイド」を、果樹栽培全般については「果樹栽培の完全ガイド」をご参照ください。





